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共通プラットフォームの進捗は?レジリエンスとデータベースで何が変わる?-JATA経営フォーラム

旅行業・宿泊業の負担軽減と業務効率化へ
大規模なプラットフォーム化に向け、参画するメリットも必要

レジリエンス機能で災害時の宿泊施設の負担減、旅行会社の業務改善も

下電ホテル代表取締役社長の永山久徳氏

 パネルディスカッションでは、レジリエンス機能について災害時対応の現状や機能に対する期待、要望などが話し合われた。下電ホテル代表取締役社長の永山久徳氏は、2018年7月に起きた西日本豪雨災害の経験を振り返った。下電ホテルでは被害はなかったが、旅行のキャンセルや緊急避難を申し出る被災者の予約などが入り混じり「通常と違う予約状況でひっちゃかめっちゃかの状態」だったという。

 そんななか、さまざまな旅行会社から現状の問い合わせが1日2、3000件来て対応が非常に困難だったことを説明。周辺の道路の混雑状況や施設の営業状況など、回答できない質問もあり困ったこと、1本の電話が長くなり電話回線が埋まり、一般の予約電話が取れなかったことなどを振り返った。

 その上で永山氏は「災害時の電話応対の負担は大変なものがある。作業が軽減され、全体の電話が2割でも3割でも減ればかなりの効率化になる」と、レジリエンス機能に期待を示した。加えて「施設が電話に出ないのも一つの情報。何時時点でそういう報告があったという一文があれば、他の人も電話をしないですむ」と語り、旅行会社の書き込みを可能にすることを提案。「書き手を宿泊施設だけでなく誰でも書けるようにすれば集合知、マスとしての情報が確立するのでは」と話した。加えて「欲を言えば災害時だけでも、一般のお客様がサイトを見られるようになれば、お客様からの電話の負担減にもつながる大きな可能性がある」と示唆した。

農協観光事業統括部長の香川晋二氏

 農協観光事業統括部長の香川晋二氏は、西日本豪雨災害の際に岡山市内におり対応に追われたことを説明。状況を知るために人海戦術で電話をひたすらかけたといい、「電話を主体として情報収集しているのが実態であり、その結果施設に負担をかけている」と振り返った。レジリエンス機能については「ワンストップで情報取得ができる。即時性・確実性の向上は非常に期待でき、それが各事業者の負担軽減につながっていく」と期待を寄せた。さらに、レジリエンス機能では被災地全体の被害状況が分かるようになるとし、「全体感が分かった中での対応は非常に大きなメリットになる」とした。

 日本旅行ツーリズム事業本部国内旅行事業部担当部長の廣谷良氏は、東日本大震災の時の体験を語った。当時関東の仕入れ担当部署にいた同氏は、行き場を失った修学旅行生の受け入れ先を探すためにさまざまな施設に電話し、電話がつながった時は今後つながらなくなることを懸念し、保留せずに担当者をひたすら待ち続けたことを説明。「施設の方に迷惑をかけた経験がある。レジリエンスを含め施設の状況が分かればこれに越したことがない」と話した。

 同氏はレジリエンス機能について「災害時に旅行者の安心安全対応が迅速にできるのかがカギ」と語り、迅速に情報を得ることができれば旅行者への対応も変わると主張。さらに永山氏と同様に「災害時はレジリエンス機能が観光庁のウェブサイトに掲載され、業界人だけでなく一般人も見れ、被害状況がわかればもっと効果的なものになるのでは」と提案した。