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海外旅行回復に向けた旅行会社ならではの需要創造策は?PKGはなくなるのか?-JATA経営フォーラム

リアルならではの「顧客を知る」強みを生かし需要を創出
世界の商習慣に合わせ業法改正も

パネルディスカッションの様子

 日本旅行業協会(JATA)は2月21日から3月31日まで、オンラインで「JATA経営フォーラム2023」を開催中だ。今年のテーマは「旅行業再生~質的転換へのアクション~」で、このうち海外旅行をテーマにしたパネルディスカッションでは「新たな需要創造」をテーマに設定した。ディスカッションではモデレーターを務めたJTB総合研究所コンサルティング事業部ツーリズム戦略部長の濱中茂氏が、論題として「コロナ前後での状況の共有」「日本人の海外旅行需要の回復に向けた想定と回復に必要なこと」「旅行業再生に向けた展望」を提示。「明確な取り組み事項を示すのでなく、需要創造に向けて持つべき考え方を皆様と一緒に考えていきたい」と呼びかけた。

【パネリスト】
JTB Hawaii Travel社長 石田恒夫氏
ベルトラ取締役最高執行責任者 萬年良子氏
パーパスジャパン代表取締役 酒井修一氏
【モデレーター】
JTB総合研究所 コンサルティング事業部ツーリズム戦略部長 濱中茂氏

海外旅行の復活、日本人は出遅れ 現地や予約に影響も

JTBHawaiiTravel,LLC社長の石田恒夫氏はハワイから参加

 「コロナ前後での状況の共有」については、まずJTB Hawaii Travel社長の石田恒夫氏がハワイにおける日本人旅行者の動向を解説した。2019年にハワイを訪れた全渡航者数は約1039万人だが、このうち日本人は約16%を占める約155万人。最大市場は全渡航者数の3分の2を占める米国本土から旅行者だった。

 一方2022年は新型コロナの影響で米国本土の旅行需要がハワイに集中し、全渡航者数の9割が米国人となった。石田氏によればこの結果宿泊単価が上昇。さらにレンタカーを活用する米国市場がメインターゲットとなったことで、オプショナルツアー会社がクアロア・ランチなど人気スポットへの送迎付きサービスを減らした。加えて日本市場の縮小で日本人スタッフが減るなどの影響が出ているという。ただし、今後は米国の景気停滞もあり、ホテルやオプショナルツアーについては「日本市場にシフトし始めるのでは」との見通しだ。なお、2022年の日本人渡航者数は19年比15%だったが、10月・11月は25%、12月・1月は33%だった。なかでも年末年始は47%まで回復したという。

 ベルトラ取締役最高執行責任者の萬年良子氏は、日本人旅行者の予約のリードタイムが外国人旅行者よりも短いことを説明。「日本人は安全性を重んじるので準備期間が長い。日本人の非常に慎重になるところと、世界でコロナが明けて旅行者が飛び出しているところのギャップで、日本人の予約が取りづらいというのが今の状況では」との見方を示した。

 パーパスジャパン代表取締役の酒井修一氏はコロナ禍について「日本人は家族や周囲に迷惑をかけてはならないというメンタルが非常に強く、海外旅行を家族に反対されているといったケースが多かった」と振り返った。実際に海外旅行をしたケースはドバイ万博など期限付きイベントに参加する業務渡航や、アイスランドやスイスといったアウトドアアクティビティが楽しめる自然が豊かな国を選んで行く場合が多かったという。

 こうした議論を踏まえ、濱中氏も「コロナ禍の3年でアクティブシニアや団塊の世代といった従来のターゲット層が年を取り海外への移動機会が減少した。さらに安心・安全の意識が形成され、旅行マインドの変化があるということを押さえておくべき」と話した。