海外旅行回復に向けた旅行会社ならではの需要創造策は?PKGはなくなるのか?-JATA経営フォーラム
リアルならではの「顧客を知る」強みを生かし需要を創出
世界の商習慣に合わせ業法改正も
グローバルスタンダードを見据えた対応を、ダイナミックパッケージ一本化に懸念も
「日本人の海外旅行需要回復に向けた想定と回復に必要なこと」については、酒井氏が仕入れの観点から「航空会社の海外路線の復活のスピードが最も重要」と強調。ホテルについては、海外旅行が復活した外国市場の影響から「日本以外のアジア市場にアロットを出すホテルも増えた」と懸念を示した。さらに、ホテルのデポジットやキャンセル料の規定が厳しさを増してきたことを指摘し「日本も世界に合わせたレギュレーションの見直しが急務。日本人観光客はマナーも良く、受け入れを続けたい国は多い。この段階で旅行業法を含め、国際基準に合わせ法整備する必要があるのでは」と主張した。
また、同氏はハードを持たない旅行会社にとって航空会社やホテルなど仕入れ先との協業が重要であるとし、「高い安いといった一時的な比較の考え方でなく、会社の方向性やコンセプトに寄り添って商品を作るべき」と提案。「一方的な仕入れでは人間関係が構築できない。互いにWinWinになるよう話し合い、そこに旅行会社がアイデアを出すことが重要」と話した。
加えて酒井氏は航空会社の直販化や変動運賃の提供が進むことから「パッケージツアーは終焉するのでは。そうなったときお客様の多様化する目的に合わせて旅行会社が全て対応するのは不可能」とコメント。2022年のワールドカップ(W杯)カタール大会の際、同社の旅行商品を申し込んだのは60代から70代がほとんどだったが、カタール現地にはインターネット経由で自らチケットや航空券を予約した若者が多くいたことを説明し、消費者の情報検索・自己手配力が高まるなか「イベントですら旅行会社が入れる隙間がだんだんなくなっている」と懸念を示した。そのうえで「今後の旅行会社の形態は手配業代理業ではなく、情報産業に極端に転換していくのも1つの考え方」と持論を展開した。
一方、石田氏は第1種旅行業について「デジタル化は基盤でダイナミックパッケージは潮流ということは理解しているが、ダイナミックパッケージ一本足打法になっていることに危惧している」と語り、ダイナミックパッケージが顧客のニーズに沿っているかを疑問視。「日本は変わらないものと変わるもののバランスを通し、緩やかに周りと協調しつつ変化する土壌だと思う」とし、「今一度顧客に丁寧に寄り添った時間軸と革新が求められている。2023年はパッケージツアーが再出発する年になるのでは」との考えを述べた。
また、石田氏は旅行業を「旅という処方箋の活用した心や体の活性化産業」と改めて定義したうえで、「今は海外旅行へのモチベーションを高めるとき。いかに五感に訴え共感を得ながら興味・関心を創造していくのかが重要」と話した。同氏は自社サイトやInstagram、youtubeを利用してハワイの最新情報を発信していることを紹介し、「需要創造とは顧客と旅行会社がワクワクすること」とコメント。旅行従事者自身が旅行ムードを醸成していく必要があるとした。
このほか、同氏は今後の見通しについてもコメント。そのうえで新型コロナの感染症分類が現在の2類相当から5類に変更されることもあり「必ず23年度中にはマインド回復と転機がやってくる。23年は国際交流再開の年であり、分岐点になるのでは」と期待を示した。ハワイの場合現在はFITがメインだが、23年には渡航者数は5割程度まで戻り、パッケージツアーをはじめ旅行会社経由の渡航も増える見通しという。さらに同氏は2024年には大型インセンティブや教育旅行も動き、25年には19年に近いレベルまで回復すると予想した。
萬年氏は自社の傾向として「今までの周遊型と異なり、目的がしっかりした旅一生に一度は行ってみたい国が人気」と説明。さらに、コロナで人と人との繋がりが重視される傾向から、数は少ないながら「このガイドと行きたい」というような「価格を超越して思い切って計画を立てていきたいというプロダクトアウト型の旅行」が人気だとした。
また、萬年氏は「商品が成功したら作る側もワクワクする。旅行会社がワクワクを創造していくことが一番大事な需要獲得につながること」と強調。顧客目線で考えることの必要性を改めて指摘し、「旅行がライフイベントで人生を彩るためのエッセンスと捉えて考えるなら、お客様にどういう体験を提供するか、本当に体験してもらい事は何かをきちんと追究し、それを押し出していくこと」が重要とした。