訪日旅行は堅調、さらなる回復に向け交流人口の拡大へ、和田長官会見
観光庁の和田浩一長官は1月18日に会見を開き、改めて今年は国内外の観光需要の本格的な回復・拡大を図っていく考えを強調した。3月までに策定する新たな観光立国推進基本計画に「持続可能な観光」「消費額の拡大」「地方誘客促進」の3要素を盛り込み、観光の持続可能な形での復活を目指す。
足元では、訪日外国人旅行者数は昨年10月以降3ヶ月連続で増加しており、12月にはコロナ前の2019年同月比で54%にあたる137万人に回復した。また2022年の年間訪日旅行者数は383万人で、前年の約16倍となった。2019年比では88%減の状況だが、和田氏は「コロナの影響は継続しているが、水際対策緩和、円安効果も相まって、中国を除き堅調に回復している」との見方を示した。
また、2022年10月-12月期の訪日外国人消費額は5952億円と、2019年同期比で約5割まで回復した。旅行者数と比較すると消費額の回復が大きく、単価が上がっている状況にあるといい、「円安の効果と久しぶりの日本への旅行で消費意欲が喚起されている」と見ている。1人当たりの旅行支出は21万2000円で、2019年同期比で24.6%増加した。
一方、2022年の日本人出国者数は277万人で、2019年比では86.2%減だった。12月単月では43万人で、2019年同月比では25%まで回復している。
全国旅行支援が再開、10月、11月の宿泊者数はコロナ前を上回る
日本人の国内旅行については、昨年10月11日から全国旅行支援が開始された。10月、11月の日本人の国内宿泊者数はコロナ前を上回り、訪日旅行者数も回復傾向にあることから、「全国の観光地に賑わいが戻ってきている状況にある」という。1月10日からの再開にあたり事業者に混乱が生じたことについては、「制度の一部見直しを行い、現場で戸惑いの声があったと聞いているが、昨年からの引き続きの事業ということもあり、比較的スムーズに再開できたと認識している」とコメントした。
全国旅行支援は少なくとも年度内は実施する見込みで、各都道府県の予算がなくなり次第順次終了となる。その後の需要喚起策のあり方については、関係業界から「細く長く」継続を希望する声がある一方、国に頼らず自律的な経営を目指すべきとの声もあるとして、「業界と相談しながら、需要動向や感染状況を踏まえ適切に対応していく」と述べるにとどめた。
日本ASEAN友好協力50周年、協力関係のさらなる強化へ
今年、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)は友好協力50周年を迎える。コロナ前の2019年には日本からASEANには約570万人が、ASEANから日本には約390万人が訪れており、双方の交流人口は1000万人近くまで拡大した。和田氏は「課題は観光交流の回復・拡大に加え、世界各国が抱える持続可能な観光の実現に向けた協力体制の構築。50周年の機会を捉え、こうした課題についての意見交換を通じて協力関係を一層強化し、双方の発展に繋げていきたい」と意欲を示した。
観光需要の回復にあたっては中国市場の存在も大きい。コロナ前には訪日旅行者の約3割にあたる959万人が中国から訪れていたが、2022年は19万人にとどまり、全体の5%に満たない状況だ。和田氏は「引き続き中国は重要な市場だという認識は変わりない」として、交流再開時に備え、日本政府観光局(JNTO)とも協力してプロモーションの準備をしていく考えを示した。