ホテル業界の現在とこれから、学生が聞く「若者が今『観光業界』へ進むべき理由」
ホテル業界はどう変わっていくか
今後ホテル業界はどのように変わっていくかという問いに対して、中氏は宿泊客にとっての最大のストレスはチェックイン・チェックアウトの手続きだとして、AIやDX化を活用してこれを短縮していくことで市場が変わっていくのではないかとの考えを示した。
また中氏は、数年前には利益が出ないからとレストランを持たない客室特化型のホテルが多数誕生したが、現在はそうしたホテルが魅力を持っていないと指摘。「時代とともに価値観も変わる。今最も顧客に訴求できるタッチポイントは食と文化とアクティビティ。私は食の提供を20年以上大事にしてきたので、自分の時代が来たなと思っている」と語った。
これに対し中山氏は、人手不足が深刻化するなかで、人が介在するホテルとしないホテルの二極化が進むだろうと予測した。「『変なホテル』さんのように人が介在しない形で滞在できる体験に特化された施設と、徹底的に人が価値であるとして、様々なスペシャリティを持つスタッフを抱えて魅力的な体験ができる施設のどちらかになるのではないか。後者はAIには代替できないもので、それに人は惹かれていくのだと思う」(中山氏)。
日本のホテルは安いか、高いか
参加した学生からは、ホテルには価格を求めてしまうという声も上がった。これに対し中氏は「その価格がホテルの価値だと捉えた場合、どのくらいまでがお客様に支持される金額なのかというところにチャレンジしていきたい」と応じた。そのうえで「OTA経由で最安値で来てくれたとしても、何か刺さるコンテンツをきちんと提供していればファンになってくれると思っている。リピートしてくれる仕組みがホテルには必要。自分達のホテルがどうありたいかを考えて運営しなければ、いくら安くてもお客様は来ない」との考えを示した。
また、日本のホテルは海外に比べそもそも単価が低いという指摘もある。中山氏は、価格設定の指標はターゲットを日本人に置くか海外からの旅行者に置くかという施設ごとの考えによるとしたうえで、付帯領域での収益化を提案。「施設は部屋数が決まっているが、付帯領域を広げることで売上が伸び、賃金も上げていくことができるのではないか」との考えを示した。中氏もこれに同意し、「これまではおもてなしをしっかりすればホテルには人が来ると思っていた人が沢山いたが、物価も上がり、利益を上げるための構造も変わった。ホテル事業の仕組みはホテルのタイプにより全く違う。そこをしっかりと学んでいくことが必要だと思う」と語った。
観光業界を目指す学生に向けて
パネルディスカッションの最後に学生へのメッセージを求められた中氏は、「自分のやりたいことを仕事にできることはとても幸せなこと。できたら観光業界やホテル業界で一緒に働けたらいいと思うが、まずはやりたいことを仕事をしていくことにフォーカスしてほしい」と語った。中山氏は「ホテル業界はハードで、どんどん落ちていった業界だが、底に来たのではないかと思う。これから上がっていくしかないことを考えると、入った方が面白いのでは」と呼びかけた。
訂正箇所:2ページ目 第3段落
誤:スイレンテラス
↓
正:スイデンテラス
※訂正案内(編集部 2022年12月28日11時35分)
訂正箇所:1ページ目 第1段落 主催者名
誤:旅行計画アプリ「nicody」を運営する結.JAPAN
↓
正:観光業界に関心を持つ25歳以下のコミュニティ「若手観光コミュニティHIT」
お詫びして訂正いたします。