ホテル業界の現在とこれから、学生が聞く「若者が今『観光業界』へ進むべき理由」

  • 2022年12月23日

ホテルの仕事、スタッフと総支配人との違いは?

 ホテルの仕事というと、ドアマンやフロントはイメージしやすいが、総支配人の仕事は学生には見えづらい。坪井氏が両者の役割の違いや総支配人に就く人の人物像を尋ねると、中氏は自身は総支配人になろうと思っていたわけはなく、流れの中で「できるかな」と思ってチャレンジしたと前置きしたうえで、「資質は色々あると思うが、総支配人に限らず、マネジメントで人を束ねていくフェーズと『人と一緒にやっていく』というフェーズの両方が大事になる」と回答。スタッフレベルでは視野を広げることと視座を高く持つことという2点が大切だが、総支配人はスタッフの能力をどのように活用して伸ばすかを考える必要があると説明した。

ホテルやホスピタリティ市場の課題

坪井氏

 ホテル業界は観光業界のなかでも特に若者の流入が少なくなっている。坪井氏が課題を尋ねると、中山氏は現場をテクノロジーで変えていこうと挑戦する企業が少なく、まだプレーヤーがいないことを挙げた。中山氏はホテルのDX化を進めたいという思いから、土日はホテルで働き、ポジションごとに効率化できるポイントを探っている。こうしたDXは、課題となっている宿泊業界の給与水準の向上にも寄与する可能性があるが、一方で中山氏は「スタッフも収益を作り出すことに何かしら関わり、ソフトスキルを上げていかなければ、給与は上げていけないのではないか」との持論を展開した。

 給与に関連して中氏は「もちろん入口の給与は大切だが、それよりも学生の皆さんは、どのようにステップアップできるかを明確に知りたいのではないか」と問いかけた。中氏が総支配人を務めるスイデンテラスでは、どうすれば給与が上がっていくかをオープンにしている。人手不足で業務量が増えているため今年は期中で給与を上げたというが、「(給与アップは)モチベーションになるが、スタッフ達がそれを目的としているとは思えない。それをモチベーションにして、次のステップに行ってもらいたい」との考えを示した。

ホテルやホスピタリティ市場に向いている人は?

 坪井氏がホスピタリティ業界を目指す人に求められる資質を問うと、中氏は対応力と想像力を挙げた。「ホテル業界に限らず、人の担う仕事はこれから想像力を持ってやっていくことばかりになると思う。それ以外はAIがやってくれる。答えのないものに向かっていく力が、特にホテル業界には必要になる」。また、必ずしも現場から積み上げる必要はなく、ホテルの開発や旅行代理店から転職するなど、観光業界内を行き来する選択肢も示した。

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