ホテル業界の現在とこれから、学生が聞く「若者が今『観光業界』へ進むべき理由」
観光業界に関心を持つ25歳以下のコミュニティ「若手観光コミュニティHIT」は12月22日、「若者が今『観光業界』へ進むべき理由」と題して、観光DXやキャリア形成を語るオンラインイベントを開催した。プログラムはパネルディスカッションと交流会の2部に分かれ、学生30名が参加。パネルディスカッションには旅行計画アプリ「nicody」を運営する結.JAPAN代表取締役の中山雅久理氏と、ホテル運営を手掛けるライブ・ホスピタリティ・デザイン代表取締役の中弥生氏が登壇した。本記事では学生たちの宿泊業界に関する疑問に答えたパネルディスカッションの模様を紹介する。
なぜ観光業界を仕事に選んだか
はじめに坪井氏から、登壇者両氏の学生時代となぜ観光業界を仕事に選んだかが質問された。とにかく旅行が大好きで国内外の色々な場所を訪れていたという中氏は、ある大阪のホテルで見た光景がホテル業界に入ろうと思った最大のきっかけだったという。「とても格好良いスーツ姿の女性が海外の方に部屋を案内している様子を見かけて、英語さえできれば世界で働くことができる、ホテルは世界中にあるのでどこかで食べていけるのではないかと思った」(中氏)。
中山氏は、起業したいという気持ちがまずあって上京。ITベンチャーなどを軸にインターンをしていくなかで、インバウンドが盛り上がり始めた2016年に起業のタイミングが訪れ、「そこにベットしてみようかという、ノリで入り込んだのが観光業界だった」と話す。しかしその後、旅行者や様々な関連事業者と交流するなかで業界の面白さを知り、現在に至るという。
ホスピタリティを提供する仕事を続ける理由
コロナ禍により多くの人材が観光産業を離れている。中山氏の会社も例外ではなく、コロナ前にはインターンを含め20名弱のメンバーがいたが、中山氏ともう1人の役員の2名だけになった。坪井氏がそれでも事業を続ける理由を尋ねると、中山氏は「正直ほかの業界で事業をすることを思いつかなかったし、まだまだ観光業界でやり切ったことがなかったので、もっと形にしていきたいという思いが強かった」と答えた。
ホテル業界で20年以上の経験のある中氏は、鳥インフルエンザやリーマンショックの例を挙げ、観光業界は世の中の良い余波も悪い余波も受けやすいことを説明。業界の浮沈を人生にたとえ、「観光業界は人生に寄り添っていく事業だと思う。観光業界には対応力と想像力が結集されている。魅力は自分をどんどん成長させてくれること。人間の喜怒哀楽をダイレクトに受けつつそれをビジネスにしていくことは、とても楽しい仕事」と語った。「お客様からの『ありがとう』が、慈善事業ではなくきちんとビジネスに結びつき、顧客満足が上がれば売上が上がっていく。ビジネスの仕組みとして面白いと思う」(中氏)。
坪井氏が中氏にこれまでの失敗談を尋ねると、中氏は20代後半にパークハイアット東京で働いていた頃、海外からの顧客の対応をしていたときに相手を苛立たせてしまい、コインを投げつけられたエピソードを披露。「たとえ語学力が不足していても、リカバリーできる自分の強みが分かっていれば対応できたのに、頭が真っ白になってしまった」。その話がホテル全体に広がり大きな問題になったことが、自身と向き合い、価値観が変わるきっかけになったという。
次ページ >>> ホテルの仕事に向く人は