和田長官、持続可能な観光へ「3つの戦略」を推進

-日本の観光のあり方について、中長期での見通しをお聞かせください。

和田 観光立国推進基本計画については、中長期的な観光のあり方も見据えながら議論し、年度内にまとめていきます。その際には、先ほど挙げた3つのキーワードに留意し、3つの戦略に取り組んでいくことが基本になります。コロナ前の状態にそのまま戻せばいいということではなく、消費額の増加や地方への誘客、持続可能な観光など、自然や地域経済を持続可能な形にしていくことが重要です。

-サステナブルツーリズムについては世界各国で推し進められていますが、日本としての差別化戦略は。

和田 世界でもサステナビリティという言葉が使われていますが、よくよく見ていくと各国で意識が違うところがあります。例えばヨーロッパでは「地球環境に優しい観光」を推進しており、「飛行機を使わない」といった意識が強いですが、日本は島国ですし、ヨーロッパからも離れています。もちろん航空分野での環境対策には取り組んでいただきつつ、CO2の排出を抑えた観光を広める、プラスチック製品を使わないなどの取り組みも必要だと思っています。

 併せて、特にアジアの国々とは、地域社会や地域経済の持続性を高める観光を、連携して進めていきたいと思っています。地域の持続可能性を高める観光は、主に5つの要素に分けられます。1つ目は地域資源を保全しながら観光するコンテンツを作ること、2つ目に地域経済を広く活性化し、地域一体での取り組みを促進していくこと、3つ目に関係者の雇用の維持・確保を図るために労働環境を改善していくこと、4つ目にオーバーツーリズムを未然に防ぎ、住民の理解を得て住んでよし訪れてよしの観光地域づくりを進めること、5つ目は一過性の補助金頼みではない、持続的な誘客消費戦略が策定される仕組みをつくることです。

-宿泊業界をはじめとして観光産業では人材不足が深刻で、円安により外国人人材の日本離れも懸念されていますが、対策をどのように検討していますか。

和田 短期的には何よりも、官民で連携し、賃金水準をはじとした従業員の待遇向上を図り、人材確保のための環境を改善していくことが重要だと思っています。

 国の支援制度として「観光地の再生高付加価値化」や「観光DX化」のメニューがありますが、例えば支援の際には賃金水準の引き上げを求めていくなど、待遇向上に取り組んでいきたいと思っています。この取り組みは次の事業から始めるべく検討しており、宿泊事業者のほか、観光施設事業者なども幅広く対象となります。

 こうした形で国内人材の担い手確保を進めながら、それでも足りない部分は外国人材の活用も考えていく必要があります。海外での特定技能試験の実施に加え、日本の宿泊業での就労意欲を喚起するために、業界団体とも連携し、宿泊業の魅力や雇用環境を外国人の方々に向けて積極的に周知・発信をするなど、環境整備を整えていきたいと思っています。

-ありがとうございました。