和田長官、持続可能な観光へ「3つの戦略」を推進

 2022年、観光庁は「国内交流の回復や新たな交流市場の開拓」「観光産業の変革」「稼げる地域の実現」「国際交流の回復」の4点を柱に観光産業の復活に向けた取り組みを進めてきた。10月には水際対策が緩和され、訪日観光客は増加傾向にあるが、海外旅行再開の動きは鈍く、関連事業者には資金繰りや人材不足など課題も多い。12月に実施された専門紙会見で和田浩一長官に1年の総括と本年の指針を聞いた。

和田氏

-はじめに、2022年の観光政策の推進状況を振り返っていかがでしょうか。

和田浩一氏(以下敬称略) この3年近く、観光行政の最大の課題はコロナへの対応にありました。観光庁では感染拡大防止と社会経済活動のバランスをとりながら、国内需要の喚起、宿の高付加価値化、デジタル化の支援など、深刻な影響を受けている観光関連産業を多面的に支援してきました。

 そうしたなか、ようやく10月から、全国旅行支援の開始とともにビザなし渡航、個人旅行再開など水際措置が大幅に緩和され、いよいよ国内外の観光需要を本格的に回復させる局面に変わりました。10月に開催された観光立国閣僚推進会議でも、岸田総理から観光立国の復活に向けたご指示をいただくなど、我が国の観光の復活に向けて大きな転換点を迎えた年になったと思っています。

-2023年の抱負や課題、戦略をお聞かせください。

和田 全国旅行支援の効果もあり、2022年10月には日本人の国内延べ宿泊者数がコロナ前を上回るとともに、11月の訪日外国人旅行者数は、中国を除くとコロナ前の54%まで回復しました。引き続き国内外の観光需要の本格的な回復、拡大を図ることが重要であり、今後は消費額拡大、地方誘客促進、持続可能な観光という3つのキーワードに特に留意して、3つの戦略を進めていきたいと思っています。

 1つ目は全国旅行支援や第2のふるさとづくりプロジェクトなどによる「国内交流拡大戦略」。2つ目に消費額増加や地方誘客促進を図るための「インバウンドの回復戦略」。3つ目に観光地や宿の高付加価値化の計画的・継続的支援などによる「高付加価値で持続可能な観光地域づくり戦略」です。

 必要な予算をしっかりと確保しつつ、我が国の観光を持続可能な形で復活させるため、この3点を総合的か強力に推進していきたいと考えています。

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