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地域への出向開始から2年、JALの非航空事業が目指すもの-JAL執行役員 地域事業本部長 本田俊介氏

  • 2022年11月29日

本田 また人流の増加に貢献するという面では、これまでも農泊をテーマに取り組んできました。どこの地域にも農業に関しては人員不足、後継者不足の課題があります。その理由の1つとして収入が不安定であるという課題があると考えており、その課題に対して農家に泊まる「農泊」を推進することで解決していきたいと思っています。観光地では宿泊施設が特定地域に集中することでオーバーツーリズムの原因にもなりますので、農泊を活用することで宿泊者の分散化も実現できると考えます。

 そのほか、JALでは農泊のプロモーション以外にも、客室乗務員が日本ファームステイ協会の「農泊品質評価支援制度」の評価員資格を取得し、農泊を実施されている農家さんや農泊を開始したいと考えている農家さんのお手伝いをするなど、農家への宿泊という体験の間口を広げていく取り組みも行っています。教育的視点で子どもに自然体験や農業体験をさせたいというニーズも増えているので、農泊をベースに交流を拡大していきたいと考えています。現在、各地域のJAとネットワークのある農協観光さんと提携し、具体策を固めているところです。

 また、現在は中国向けのみ対応している越境ECのプラットフォームについても、対象エリアの拡大を目指します。ITで世界のマーケットが繋がっているにもかかわらず、地域では海外に向けた特産品の売り場がないという課題があります。サービスを開始したばかりでまだノウハウが足りない部分もありますが、中国のロックダウンも解除されてきたため今月からプロモーションを開始し、徐々に取り扱いを拡大していきたいと思っています。このほか物流においては、商社機能を持つグループ会社のJALUXと協力して、地域の新たな商品開発も進めていきたいと考えています。

 出向者の取り組みも同様ですが、根本にあるのは関係・交流人口の創出です。例えば山口県では、毎週社員が梨農園に収穫のお手伝いに行っていたのですが、その後も農園に個人的に遊びに行ったり知り合いに紹介したりと輪が広がっています。地域と混ざり、関係人口の拡大を進めていくことが最終的なゴールです。そうすることで永続的な関係が生まれていくと思っています。

-二次交通の話題も出ましたが、今後こうした課題にも取り組んでいかれますか。

本田 現在、JAL MaaSでは交通機関に遅れが出たときなどに代替交通機関を提示するサービスを提供していますが、このアプリをさらに拡大していく予定です。例えばタクシーは、これまで乗車率が6割を超えるとタクシー待ちの列ができると言われていました。これが現在ではアプリの普及が進み、稼働が6割を超えていてもタクシー待ちの列はあまり見かけなくなりました。今ある無駄をDXで解決できる部分は多くあります。私たちもJAL MaaSを活用しながら課題解決をしていきたいと思っています。

 ドローン事業や「空飛ぶクルマ」事業も運航ルール作りやパイロット養成の規定作りを進めています。こうした次世代のインフラが普及してくると、二次交通の新しい形も生まれてくるのではないでしょうか。

-読者にメッセージをお願いいたします。

本田 コロナ禍により人の価値観も変わりました。旅行の目的も観光名所を巡るという観光から、自分で体験して地域に役立つことを実施するような形に変わってきています。また世界的にはアドベンチャーツーリズムが注目されています。日本ではまだ広がっていませんが、日本にはアドベンチャーツーリズムに適した地域がたくさんあります。表面的な観光ではなく、地域が持つストーリーをしっかりと伝え何かを感じてもらうということに目を向けていくと、非常に良い取り組みになると思います。

 まだまだ日本にはアドベンチャーツーリズムの開拓余地があります。コロナ禍で大きくダメージを受けられた方も多いと思いますが、是非もう一度、日本の良さをアピールできるアドベンチャーツーリズムの仕組みを使いながら、一緒に海外と日本の交流を増やしていきたいと考えています。

-ありがとうございました。