itt TOKYO2024

地域への出向開始から2年、JALの非航空事業が目指すもの-JAL執行役員 地域事業本部長 本田俊介氏

  • 2022年11月29日
-出向から戻った方に期待することは何でしょうか。

本田 立場が変わると見方も変わると言いますが、地域の方々が何に困っているのか、何を必要としているのかを体験したことで、その社員の発信力や言葉の重みも変わってきます。出向から戻った社員には、これまでとは違う視点で社内へ発信する役割を担ってもらいたいと思っています。また、戻る部署により色々な役目を果たしてくれることを期待しています。

 例えば航空券を販売している営業部門は、これまで多くの場合、企業への営業や旅行会社様に向けた航空券の販売を行っていました。しかしながら、最近ではご利用者様個人がwebサイトで航空券をご購入いただくダイレクト販売が進んでおり、営業部門の業務内容に変化が起きています。そのため、これまで旅行会社様向けの航空券販売を行っていた時間などを地域事業に取り組む時間に充てていく予定です。出向先から営業部門に戻った社員には、今度は地域の現状を知った上でJALの立場も考慮しながら地域のために活躍してもらいたいと思っています。また客室乗務員であれば、地域での経験を商品開発やサービスに活かしてもらうこともできるでしょう。地域の話題はお客様とのコミュニケーションのヒントにもなると思います。空港職員には、JALの地域拠点の1つでもある空港で地域との連携ができないかを考えてもらいたいと思っています。

-子会社のジャルセールスの吸収合併を発表され、これまで以上に非航空事業にも注力されていくと聞いています。今後の非航空事業へのお考えをお聞かせください。

本田 現在、合併後の事業内容を整理しているところです。先ほどもお話した通り、航空会社の営業部門の役割が、航空券販売のみではなくなるなどの変化が起きています。企業に対する営業活動や修学旅行への取り組みは継続していきますが、観光旅行や出張用の航空券販売の多くがwebに移行してきています。そうして生み出された時間で、ソリューション事業、地域のための需要開拓や特産品の磨き上げ等といった、総合的に地域のためになるビジネスを検討中です。

-来年度、非航空事業では具体的にどのような取り組みを予定されていますか。

本田 やりたいことはいくつもあります。例えばふるさと納税です。地域の財政が豊かになるお手伝いができればと考えJALでも始めましたが、徐々に地域による格差が見えてきました。肉や魚介類が豊富な自治体には多額の納税が集まりますが、そういった品物がない自治体もありバランスが悪くなっています。そのような課題へのJALならではの打ち手として、来年4月から「JALふるさと納税」のオリジナル返礼品として、その地域を訪れるJALの旅行商品に使用できるクーポンの発行を始めます。肉や魚介類などの人気返礼品が無い地域でも、観光を通じて納税が集まっていく仕組みです。

 また、「旅先納税」を行うギフティさんとの提携も開始しました。旅先の自治体で納税すると、その地域での宿泊や飲食、お土産購入などに利用できるデジタルクーポンがその場で発行されます。こちらも特定の事業者に限らず、地域で事業を営んでいる方々に経済効果を波及できる仕組みです。

 来年はこうした形で、地域に人が訪れて地域に納税していく「コト体験のなかでの納税」を広げていきたいと考えています。日本には約6000万人の納税対象者がいますが、ふるさと納税を利用しているのはそのうち12%程度と言われています。残る5000万人ほどはまだ利用しておらず、価値を感じていないということになりますので、そういった方々に向けて旅行という方法で納税への需要喚起ができるのではないかと思っています。

次ページ >>> 交流・関係人口のさらなる拡大を目指して