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地域への出向開始から2年、JALの非航空事業が目指すもの-JAL執行役員 地域事業本部長 本田俊介氏

  • 2022年11月29日

 日本航空(JAL)ではコロナ禍中の2020年11月、地域と地域、人と人とを繋ぐことによる人流や商流・物流の永続的な需要創出を目的に地域事業本部を創設した。同社は100名以上の社員を全国の自治体や観光協会に送り出し、各地域の課題解決に努めており、トラベルビジョンでは2021年11月より1年間その活動を追ってきた。10月に水際対策が緩和され国内外の需要回復が見込まれるなか、JALは今後どのように地域事業をはじめとする非航空事業を展開していくのか。JAL執行役員で地域事業本部長を務める本田俊介氏に再び話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

本田氏

-地域事業本部の創設から約2年が経過しましたが、これまでを振り返っていかがでしょうか。

本田俊介氏(以下敬称略) 来年からJALでは国際線・国内線の運賃制度をほぼ統一し、海外の方も日本国内の各地域を訪問しやすい仕組みが整います。一方で、その手段を活用して「海外の方が日本の地域を訪れる理由がない」という課題も感じていました。その解決策はそのまま地域が抱える課題への回答にもなるはずだという思いもあり、人流や商流・物流を含めた需要の永続的な創出を目指して創設した地域事業本部で解決に向けた取り組みを続けています。

 地域事業を進めるなかで、多くの自治体やDMO等に社員を出向者として受け入れていただきました。社員を出向させて良かったことは、各自治体や地域の持つ課題を、実際にその地に住むことでしっかりと把握し、解決策を提示、実行してくれたことです。例えば東北では「復興」というテーマで防災ツーリズムを推進したり、海産物を売り出していくことに目を向ける。客室乗務員の視点から素晴らしい花畑を観光素材にできないかと働きかける。その地にある観光素材を活用するために二次交通の強化を提案するなど、出向者各自のそれまでの経験を踏まえて、地域の交通機関、観光素材、時間軸などを多角的に分析することで、地元の方が見落としがちな新たな切り口を見つけることができたと思っています。

-出向者の方々の様子をどのように見ておられますか。

本田 出向している社員たちの話を聞いていると、表情も話す内容も豊かだと感じました。人生を謳歌し、楽しみながら仕事をしている。その仕事が地域のためになるという実感もあり、相乗効果もあったと思っています。

 また、私自身の経験から感じるのは、JALフィロソフィが活きているなということです。「昨日よりは今日、今日よりは明日」と前向きにやっていこう、課題があれば渦の中心となって解決しよう、率先して物事にあたっていこう、と破綻後に取り組んできたJALフィロソフィの精神を出向者各自が理解し発揮できていると感じています。

 出向者のなかには引き続き地域に残り課題を解決したいという思いを抱いている社員もいると認識しています。しかし、基本的には期限が来たら会社に戻り今度は社内でこれまでの知見を活かしてもらいたい。そして次にまた別の社員にバトンタッチし、地域での活動という貴重な機会をより多くの社員に経験してもらう、という形で進めていきたいと考えています。

-昨年10月には135名が出向されていましたが、現在の状況や今後の予定をお聞かせください。

本田 現在100名弱の社員が出向をしています。コロナ禍からの回復に伴い航空需要が戻ることで出向そのものをやめるのではないかという心配のお声もいただきます。しかし、今後もJALが地域事業を継続していくなかで、航空需要が回復するからといって出向者を全て会社に戻すということはありません。場合によっては出向者の人数に増減や、一旦休止して仕切り直すケースもあるかとは思いますが、有難いことに多くの出向先から継続してほしいというお声もいただきますので、状況やニーズに合わせて調整していきたいと考えています。

 トラベルビジョンの出向者リレー企画で素晴らしいと思う点は、JALの出向者を受け入れてくださっている自治体の方にも話を聞いていただいている点です。出向者や自治体の方の話を総合すると、やはり地域には官民の連携が必要だと改めて感じます。自治体だけ、民間だけでやっていて上手くいかなかったことも、官民が一緒に取り組むことで色々な化学反応や新しい動きが起き、これまで難しかったことも解決に向けて動き出していく様子が見えました。やはり我々の知見を活かして地域の活性化をお手伝いしようと思ったら、積極的に地域に混ざり、自治体の方と一緒に考え、官民で実行に移していくことが必要だと感じます。官民が連携するなかで民間企業が実行力を発揮することが、物事を動かすキッカケや仕組みになるのではないかと思っています。

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