「持続可能な観光」実現に向け何をすべきか?ハワイ・カナダの先行事例から学ぶ-観光庁フォーラム

地元住民と観光客が参画できる仕組み作りが重要
住民の理解度向上へ、情報発信と定期的なリサーチを

カナダはバンフやナイアガラの事例紹介、地域住民が共感できるプログラムを

CTC日本地区代表の半藤将代氏

 続いて登壇した、CTC日本地区代表の半藤将代氏は再生型観光について「文化・社会・経済面のサステナビリティを重視し、観光の力でその土地をより良い状態にして次世代に受け継ごうという、住民と観光客がともに幸せになる観光」と説明。観光客に対し「カナダならではの本物の体験を通して人生を豊かににするとともに、地域の人々と共感で繋がり、その場所が自身にとって大切な場所になれば」と語った。半藤氏によれば、コロナにより観光客がマイクロツーリズムなどで地域を深く知る魅力に気付いたことから「滞在の仕方を重視し、目的を持って交流の意義を求める旅行」が増えるなど、観光客側にも変化があるという。

バンフの街並み

 同氏は地域の課題を観光で解決する取り組みとして、バンフ、エドモントン、ナイアガラの滝、プリンスエドワード島の4つの事例を紹介。国立公園に指定されたバンフは自然保護と観光の両立のため、町の広さと住民の数を制限。バンフの外に駐車場を設置し、公共交通機関を利用して観光してもらうなどの対策も実施中だ。半藤氏によれば、自然保護と開発で市民が対立したこともあったが、情報公開や公聴会の実施、対話を繰り返すことにより歩み寄れたといい、「意思決定に住民を巻き込むことが重要。規制の意味が分かれば我慢の意味も分かる」と話した。

 ナイアガラの滝については、古い発電所を水力発電の仕組みなどを学べる観光施設にしたほか、黒人奴隷が南アメリカから脱出してきたルートがあることからそうした歴史を語り継ぐツアーを開催していることを紹介し、「少し異なるナイアガラを知ることで観光の通年化や滞在日数の増加につながる」と話した。このほか、エドモントンについては先住民たちが文化を学び、継承するとともに観光客に文化を伝えてともに分かち合う取り組みをしていることを紹介。プリンスエドワード島ではホテルのシェフが中心となり、農家などの島の住民・生産者とコミュニケーションを取りながら、島の美食を広める活動をおこなっていることを説明した。

持続可能な観光でKPIを再設定、消費額を重視

 続くパネルディスカッションでは、モデレーターの石原氏が、10月11日からの入国制限の緩和による訪日旅行の本格再開を踏まえ、日本の観光戦略は見直す必要があるのかを問題提起。特に2030年までに訪日客数6000万人、消費額15兆円の目標について登壇者に意見を求めた。これに対し、ヴァーレイ氏はハワイではコロナでKPIが変わったことを説明。「コロナ前のKPIは航空座席数や滞在日数、旅行者数や消費高だったが、コロナ後はコミュニティの観光産業への理解や満足度の向上、訪問者の満足度の拡大、訪問者の消費高の3つが大きなKPIとなった」と語った。

 半藤氏はカナダでもKPIの見直しが起こっているとし、「人数よりも消費高、どういう人に来てほしいかを重視している」と話した。その上で「まずは2030年何を達成するか。何のために6000万人めざすのかを関係者とステークホルダーで再確認する必要があるのでは」と指摘した。