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「中小事業者が連携し声を上げる場を」TIFSが発起総会、新規会員も積極募集

 TIFSには、旅行会社、DMO、アクティビティ業者、宿泊事業者など、多様な業種の会員が属しているが、各者はどのような考えで参画を決めたのか。役員に就いた3氏に話を聞いた。

三井氏

 東日本大震災により廃校となった小学校を防災体験型宿泊施設として運営する貴凛庁は、コロナ前は国内にとどまらず海外からの教育旅行分野でも成長していたが、国際往来の制限により停滞が続いている。代表の三井紀代子氏は、「国の観光産業への支援について中小の声をしっかりと届け、共に我が国の観光産業復活、更なる成長に繋げていける団体としてTIFSに参画した」という。また、大阪観光大学観光学部教授でDMOに詳しい小野田金司氏は、「DMOは立ち上げから3、4年でまだまだ未熟。地域観光を担うメンバーで横連携を組みながら知恵や工夫を凝らしていく必要があると考えた」と参画の理由を語る。

 クルーズを専門とする旅行会社、ビュート代表の村田洋一氏は、「観光産業への救済策としてGo Toトラベルや県民割が始まったが、事務局の仕組みなど不明瞭な部分も多い。これに対して中小の旅行会社が取れる対抗措置がなく、このままでは観光産業はダメになるという圧倒的な危機感があった」と話す。また「TIFSは『旅行業』ではなく『観光産業』という枠組みであることも良いと思っている。同じ観光産業でも、例えばGo Toトラベルに関してホテルは賛成のはず。色々な立場の人が意見を交わすなかで、初めてしっかりしたスキームができるのではないか」と、TIFSが観光産業全体の利益向上を図り、中小の代弁者となる団体として機能していくことに期待を寄せる。

人材育成と業界内での協業に注力

小野田氏

 では団体として具体的にどのような取り組みをしていくのか。小野田氏は観光立国に向け、人材教育の重要性を強調する。「日本は世界の行きたい国ナンバーワンにも選ばれ、観光産業にはかつてない追い風が吹いているが、どこに行っても人材不足の状況。現役の学生を業界に送り込むことはもちろん、留学生や他業種からの参入も進めていきたい」(小野田氏)。大阪観光大学ではリカレント教育にも力を入れており、文科省の委託事業で受講料無料の観光DX講座を実施している。TIFSではこうした学びの機会の情報も積極的に共有していくという。

 また、観光産業内での協業にも力を入れる。村田氏は「コンベンションを開催するなど、観光産業という枠組みのなかで繋がりを広げていけば、旅行業だけでは出てこなかった商品が生まれるのではないか。メタバースも活用したい」と意欲を示す。さらに「現在TIFSのスコープには含まれていないが、中小規模の事業者も加入しやすい健康保険組合の設立も提案していきたい」(村田氏)という。

観光産業にとどまらず幅広い参画者を求める

 TIFSでは現在、団体の目的に賛同し、共に活動を行う会員を募集している。村田氏は、「TIFSは不満を代弁する機関ではなく、現状をもっと良くすることを考える未来志向の人が集まっている。そのなかで切磋琢磨することで、より良い事業環境ができていくと思う。今頑張っている人たちがさらに飛躍できる、新しい方向性を作れるような団体にしていきたい」と意気込みを語る。また小野田氏は、「追い風の日本市場に海外の事業者が入り込んでくる前に、国内の観光産業が連携して様々な施策を講じていきたい。新しくチャレンジするなら今がチャンス。ブルーオーシャンを一緒に攻めよう」と呼びかけている。(TIFS入会の詳細はこちら