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石垣の観光は量から質の転換へ、短時間勤務者活用で人材不足に挑む-石垣市長 中山義隆氏

  • 2022年9月5日

ブーム後の需要減少を経て量から質への転換図る
保育士を県外から確保、島内の主婦らを観光産業に

-石垣島のサンゴ礁が10年後に死滅する可能性があると聞いたのですが、対応を考えておられますか。

中山 可能性があるとしたら高水温による白化現象があります。石垣は暑くても32度だったのが、ここ1、2年で33度から34度になりました。水温も上がり、台風のルートも変わって、石垣に台風が来なくなると、海水が攪拌されずに水温が上がったままで白化現象が起こります。何年か後に死滅する可能性はあると思っています。

 対応として、石西礁湖周辺の水温を下げる方法を考えています。水深20mからポンプで水をくみ上げ、循環させて水温を下げるなど、学術調査のうえで可能であれば取り組んでいきたい。水族館開設の要望もあり調整段階ですが、水族館があれば絶滅したサンゴなどの種を保存して再生につなげることができると考えています。

-離島の石垣にとって観光産業の人手不足は大きな問題です。市の施策をお聞かせください。

中山 ちゅらさんブームのときや2019年も人手不足でした。解消のため、大学と協定を結び、石垣島のホテルでインターンとして研修をすると単位に認められる制度にも取り組みました。根本的な解決にはなりませんでしたが、ホテルからは英語も日本語も話す留学生は重宝されました。ですがその後コロナ禍で離職が起き、本土から来ていた従業員が地元に戻ってしまった。今は観光客は来ているのですが、従業員が戻らない厳しい状況です。

 市では島内の人材活用に向けて、専業主婦や子育て中のお母さんに仕事をしてもらえるよう子育て支援にも取り組んでいます。保育所をたくさん作り、保育士を確保するため、県外から50万円、県内からは40万円の引っ越し費用を支援しました。この施策によって5年間で石垣島に200人ほどの保育士が来てくれ、待機児童がゼロになりました。

 これが観光産業につながるのですが、待機児童ゼロで定員枠が空いたため、短時間勤務でも月64時間勤務なら保育所で預かることが可能になりました。「午前の3時間だけ仕事しませんか、お子さんは1日預かります」と、観光産業を中心に人材募集し、就職説明会も開催しました。今後も継続したいと思っています。

-石垣島の観光のあるべき姿はどのようなものでしょうか。

中山 石垣島では人口のほとんどが市街地や港の近くに住み、コンビニ、飲食店、飲み屋もあります。中心部には商業施設がある一方で、車で10分も走ればビーチや魚が釣れる海岸、人のいない山や川、星が綺麗な場所がある。高級リゾートもあればキャンプもでき、便利さと自然の両方を備えています。それはこれからも残していきたいです。

-最後に、観光産業の方々へメッセージをお願いいたします。

中山 石垣では行政と観光産業が連絡を密に取っており、島の観光に対する方向性がお互いに見えています。これからは、量から質への変革を目指して、SDGsを見据えた持続可能な、石垣ならではの素材を開発していこうとしています。全国の観光産業の皆さんで石垣に来たい方がいれば力を貸してもらいたいと思いますし、連携しながら取り組みたいと思っています。

-ありがとうございました。