地域に分け入るJAL社員たち~鹿児島県編~
客室乗務員や業務企画職など、幅広い職種の社員が各都道府県の自治体等に出向している日本航空(JAL)。シリーズ「地域に分け入るJAL社員たち」では、出向者と自治体の担当者、それぞれの目線で地域の魅力や課題、相互への期待などを語っていただくことを通して、ポストコロナに向けた地域創生を考えていく。
九州の県なかで最も広い面積を有し、温暖な気候に恵まれた鹿児島県。県北西部に位置し「住みたいまち」としても人気の出水市、空港を有する中央部の霧島市、豊かな自然に囲まれた薩摩半島南西端の南さつま市の3市に話を聞いた。
鹿児島県出水市
観光交流課付け参事(出水市観光特産品協会所属)出来谷一雄さん
北薩地域の中心地として知られ、北は不知火海、東は矢筈岳がそびえたち、温暖な気候から1年中多様な品種のみかんが栽培されています。ほど良い街並みと田園風景が広がり、県内の住みたいまちランキング1位に選ばれた魅力ある街です。冬にはシベリアより約1万5000羽のツルが飛来することで知られ、世界各地のフォトグラファーが集まる一大拠点となっています。
特産品については、本当においしいモノは希少価値が生まれますが、少子高齢化で生産能力が低下している状況で、数を生産できないと世間へ知られることはありません。また観光分野でも、目的があって来られたお客様向けの資料はありますが、全国向けの観光コンテンツ発信が乏しく、そのことに気づいていない。または気づいていても言えない環境があることを課題に感じました。
観光と特産品は両輪で、どちらかが欠けても観光誘致は成立しません。市は「稼げる観光」をスローガンに、6年後、道の駅構想を控えています。その準備段階で、私のミッションは「気づきを発言し、課題解決に向け、忖度なく対話を重ねことができる環境を作る。更に思いを紡ぐ人財を創る」こととし、観光・特産品事業者の皆さんと日々対話を重ねています。
当協会では、地元の事業者を集め、地元でしか体験できない着地型ツアーの開発、充実化を実施しています。更に団体旅客向けから個人旅客向けへ変化させることで、旅行会社で販売されている個人型ツアーのオプション選択の1つとなり、観光誘客・自治体の知名度認知へ繋がると考えています。旅行予約・宿泊予約システムへ「体験型着地ツアー」を組み込むことができる環境づくり、開発の支援を承りたいと思っています。
出水市長 椎木伸一さん
本市には、昨年ラムサール条約に登録された「出水ツルの越冬地」と、日本遺産や国の重伝健地区に選定された「出水麓武家屋敷群」という2大観光資源があります。また養鶏業が盛んで、鶏卵産出額は日本一。自然豊かな土地柄、多種多品目の農林水産物が特産で、地元産食材で構成した「いずみ親子ステーキごはん」や、各店舗が工夫を凝らした「とりたまメニュー」がお勧めです。有名グルメ漫画にも登場した無酸処理の海苔も人気があります。
出水市をもっと全国にPRし、観光客に皆様にその良さを体験してもらい、地場産業の振興に繋げていく「稼げる観光」の振興のために、既存の組織をまとめた「出水市観光特産品協会」を設立いただきました。この組織の推進力を高めるためには外部からの視点・専門家の知見が大切であり、JALでの豊富な経験をお持ちの出来谷さんには、協会のけん引役はもちろん、市全体の商工観光業の振興に尽力いただくことを大いに期待しています。
生物の多様性を大切にしながら環境保全等に取り組んできたことが評価され、今年、国内初のラムサール条約湿地自治体認証の栄誉を授かりました。また、武家屋敷群では市所有の武家屋敷を活用した群内初のホテルとなる「RITA 出水麓 宮路邸」もオープンしましたし、ギネス記録を有する竹灯籠祭り「いずみマチテラス」のイベントもあります。これらの観光素材を活用し、高付加価値の旅行・体験メニューを開発していきたいと考えています。
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