【仕事を変える】大手旅行会社から独立、ニッチな宿泊需要を取り込む-MATCH松宮英範氏

  • 2022年7月25日
-集客とオペレーションについてもう少し詳しく教えてください。

松宮 MATCHではOTAへの情報掲載や、宿泊施設のホームページ作り、SNS発信、OTA経由や自社ホームページ経由の予約がダブルブッキングしないシステムの構築、日々のプライシングまでを担います。オペレーションを担う別会社では、予約者への確認や連絡、チェックイン手続き、チェックアウトから次の宿泊客のチェックインまでの清掃を含む準備作業を行います。

-掲載するOTAはMATCHが選択するのですか。
コンドミニアムホテル「浅草エイト」

松宮 その通りです。例えば上野・浅草エリアの宿泊予約では、10月末から2月にかけて東南アジアからの予約が急増するOTAがあります。それ以外の月にはほとんど予約が入らないのにです。そういった地域特性等も考慮して選択しています。

-あと2つの事業は何でしょう。

松宮 3つ目の事業はコンサルティングと顧問系アドバイザーの仕事です。インバウンド需要の消滅で困難に直面している宿泊施設の集客支援をしています。自分の知識を伝え他の人も一緒に生き残ることが、結果的に自分の生き残りにもつながると思うからです。

 そして4つ目の事業が旅行業です。6月に第3種を取得したので本格始動はこれから。一番の目的は自社が手掛ける宿泊施設への送迎や体験プログラムをセットして販売するためですが、海外旅行や国内旅行の受注型企画を手掛けようとも思います。「MATCHのニッチな世界旅行」をキャッチフレーズに、ヨーロッパなどの魅力的で小さな町に滞在する企画をやりたい。私個人を前面に出して「松宮の企画だから行こう」と言ってくれる需要を集め、取り扱う件数を限定して無理のない形で進めたいと思っています。

-今後の展望について教えてください。

松宮 全国旅行支援が延期になり感染者数もぶり返しており、未だに状況は不透明です。これから3年、5年と続くかもしれません。それでも10年間生き延びれば再び素晴らしい100年が始まると信じています。

 パンデミックでなくなる需要があれば生まれる需要も必ずあります。例えば海外駐在員や留学生が帰国する際に14日間の隔離義務があった頃の需要。10平米のビジネスホテルで2週間隔離は厳しいですが、MATCHのコンドミニアムホテルなら最小でも25平米、大きいもので85平米あります。コロナ禍で飲食店が閉まり、行き場を失った人たちにレンタルスペースとして時間単位で貸し出したこともあります。今後も需要があるところに間口を広げていきたいと考えています。

-これからの観光業界について、どうお考えですか。

松宮 パンデミックがあり戦争が起き、燃油費が高騰、円安と、明るい材料がありません。一方でこの2年半ほど旅行が渇望されたことはなく、リアルに移動し人と会うだけで喜びを感じ、旅することの貴重さや素晴らしさが多くの人々に再認識されたはずです。そして、スマホやドローン、自動運転、自動翻訳など旅行のしやすさを後押しする画期的技術も続々と開発されています。ペットと共に飛行機や新幹線に乗れるサービスの実証も始まり、民間人の宇宙旅行も実現しました。

 夢と希望にあふれているのが本来の旅行業界の姿です。旅行業界は技術革新でまだまだ良い方向に進化できる産業だと思います。現在、この業界に働く人たちには未来を信じてほしいし、若者たちにはもっと旅をしてほしいと思います。

-最後に読者にメッセージをお願いいたします。

松宮 この2年半で率直に感じたのは、競争は必要だとしても、この状況下では皆で前へ進むべきだということです。ナンバーワンを競うよりオンリーワン同士が協力して未来を切り拓く。それが大切なことだと思います。

-ありがとうございました。