鹿児島から世界へ、第三国にも斬り込む南薩観光の拡大戦略
貸切バス3台から旅行業へ、訪日でも成果
「まずは走って考える」菊永社長のグローカル展開
菊永 当社の強みは、バス事業者としてのサプライヤーの機能と、訪日ランドオペレーターの機能を併せ持っており、「二刀流」で訪日ビジネスを展開できる点だ。当社は現在、大型・中型を合わせて20台近くのバスを保有しているが、購入費用は1台あたり5500万円で、しかも10年から12年程度で新たな車両に交換しなくてはならない。また、バス事業は価格競争が激しく、国内需要は少子高齢化もあって伸びが期待しづらい。このようなマイナス要因をインバウンドによって補うだけでなく、将来の成長につなげていきたいと考えている。
菊永 現在は上海に現地事務所、クアラルンプールにレップ形式の連絡事務所がある。また、ニュージーランドのクイーンズタウンには昨年9月に現地法人を設立しており、5月から事業を始める予定だ。
ニュージーランドではサプライヤーとしてのバス事業と、ランドオペレーター事業の両方を展開する。このうちバス事業については、すでに当社向けにカスタマイズした10名乗りのラグジュアリーバスを2台購入しており、秋から英国や東南アジアの富裕層向けのバス旅行を提供する予定だ。ニュージーランドには国外から富裕層が沢山訪れて、ラグジュアリー市場が存在している。第三国の需要を取り込むと同時に、訪日旅行のプロモーション活動にも努めて、我々のインバウンド部門への送客につなげたい。
そのほか、4月には南インドのベンガルールにも、現地の旅行会社との業務提携に現地事務所を開設した。
菊永 最初の問いについては、大前提として今後に期待できる巨大なフロンティア市場が存在しており、加えて富裕層が多いこと、日系企業の進出が盛んなことがある。また、最近の日系企業では、中東やアフリカ方面のマザーファクトリー(複数の工場のなかで中心的役割を果たす工場)をインドに置く会社も増えている。IT企業の関心がシリコンバレーからインドへと移っていることも見逃せない。
このような傾向を見ると、今後も日系企業の進出は増えると考えられる。そうなると、日系企業が社員研修を日本で実施することも増えていくだろう。将来的には日系企業やインド企業による訪日インセンティブ旅行の需要も見込めるはずだ。
2つ目の問いについては、日本から南インドへのアクセスが向上することが挙げられる。今年の10月には全日空(NH)がチェンナイに就航し、20年には日本航空(JL)がベンガルールに就航する予定だ。日本で言えば東京と大阪に相当するムンバイとデリーは、税率や許認可などのルールが変更されることが多く、リスクも大きいが、その点でベンガルールは比較的安心できる。
インドに関してはまだまだ手探りの段階だが、現地に行ってみると分かることもある。もともと私は走りながら考えるタイプで、インドに関しても「まずは走り始めよう」と思った。すでにインド市場担当のスリランカ人を採用しており、今後は取り組みを積極化するつもりだ。日本とインドの両市場のニーズに合った、インバウンド・アウトバウンド両方の旅行企画の開発に取り組んでいきたい。