豪州、次なるステップアップへ足場固め、パース線復活に期待
東海岸以外の各州でも高まる日本市場開拓の意欲
オーストラリア西海岸への期待感が高まる
2020年に向けた訪豪旅行市場の拡大に関し、最も期待されているのが西オーストラリア州で、日本からの直行便就航の実現に注目が集まっている。TAのハリソン氏も「日本からは東海岸の5都市へ直行便が運航されているが、現在西海岸には直行便がない。次にオーストラリアに関する嬉しい話題をもたらすのが西オーストラリア州からであることを期待している」と話す。
現在、日本からの直行便はないものの西オーストラリア州のポテンシャルは大きい。オーストラリア全体の日本人旅行者の伸び率が4%にとどまった17年も、西オ―ストラリア州を訪れた日本人旅行者数は9%台の伸びを記録。同州政府観光局日本局長の吉澤英樹氏は好調の要因として「ワイルドフラワーが好調だったことに加え、教育旅行需要も着実に増えている」と説明する。
また、「実は日本人観光客に人気のワイルドフラワーがシーズンを迎える8月から10月より、2月、3月の方が客数は多い」といい、この背景には「テレビ番組でロットネスト島のクォッカ(小型のワラビー)が取り上げられて人気が高まり、学生の卒業旅行需要などが増えたことや、教育旅行が好調だったこと」などがあるという。
こうした状況について、吉澤氏は「逆にいえばワイルドフラワーをやり切れていないという見方もできる」とし、ワイルドフラワーを含めまだまだ潜在需要開拓の余地が大きいと分析。課題だったガイド不足も改善してきているという。
南オーストラリアが日本市場で活動再開?タスマニアは「ワイルドライフ」訴求
また、南オーストラリア州もポテンシャルの開花へ期待が高まる。もともとオ―ストラリア最大のプレミアム・ワイン生産州でありワインやグルメの魅力が大きい。加えて観光の拠点となる州都アデレードは徒歩や公共交通機関で楽しむのに適したコンパクトなサイズで、日本人の観光デスティネーションに適しているからだ。
同州政府観光局は09年に日本事務所を閉鎖し、日本市場への重要な足掛かりを失ったままだったが、そんな環境に変化の兆しが見えてきた。今年3月の州議会選挙の結果、州政府は自由党へ政権交代。中国市場重視の一辺倒だった労働党前政権に対し、自由党は日本市場にも目配りすることが期待されるからだ。
現地関係者によれば、現在の観光政策は比較的順調で、政権交代してすぐの大きな変化はないものの、対日本市場への取り組みが今後強化される可能性は少なくないという。いきなり日本事務所開設は期待できないとしても、何らかの形で日本市場への新たなアプローチが始まることに期待したいところだ。
日本人旅行者数が約8000人で止まっているタスマニア州も今後が期待されるデスティネーション。オーストラリアの中でも豊かな自然が残るタスマニア州では、「日本市場に対してはワイルドライフの魅力を積極的に打ち出していく。とくにクレードルマウンテンやペンギンといった素材が有望だと考えており、南部で観察できるオーロラも日本市場に紹介していきたい」(タスマニア州政府観光局グローバルマーケティングマネージャーのアナベル・スウィートマン氏)としている。