「心のバリアフリー」で障がい者の旅行を推進-ツーリズムEXPO
障がい者と旅行会社のコミュニケーションが重要
細かなニーズの確認でミスマッチを防ぐ
「旅行のプロ」として期待に応える
JATAはマニュアル活用を推奨
パネルディスカッションでは障がい者が旅行する際の課題について意見交換した。日本郵船の田口氏は、ある旅行会社に車椅子利用者専用の「バリアフリールーム」の手配を依頼した際のエピソードを披露。段差がなく、車椅子が利用しやすい十分な広さがあり、バスルームに手すりがある部屋を想定していたが、実際には段差こそない部屋だったもののバスルームに手すりがない別の部屋が手配されていたという。田口氏は「旅行会社は旅行のプロなので信頼してお願いしているが、手の不自由な障がい者だったら宿泊できない。20年までに勉強してほしい」と訴えた。
加えて、「バリアフリールームのリクエストがあったら、どのような部屋を障がい者が求めているか、質問表を送ってヒアリングしては」と提案。ANAセールスの田中氏も「お客様の申し出を放置せず、どのような『バリアフリー』を求めているのか聞くべき。遠慮してしまってお客様の話を聞けない、というスタッフの心のバリアを取り払う指導も必要」と語った。さらに、「サービスの提供者と旅行者の間に立つのが旅行会社。旅行会社の責任として、サービス提供者のバリアを知らなければならない」とも話した。
田中氏は、JATAが13年度に旅行会社向けのマニュアル「ハートフルシート」を作成したことも紹介。予約の相談、手配、現地のオペレーションなどについて対応方法をまとめたもので、活用を訴えた。ただし「お客様が来店されてからマニュアルを確認するのは難しい」とも語り、今後はJATAで取り組むべき課題とした。
内閣官房の御手洗氏は政府が16年度に「心のバリアフリー」をめざし、企業などが活用できる研修プログラムを作成したことを説明。17年度にはeラーニングを提供することも紹介し、旅行会社には積極的な活用を呼びかけた。
障がい者も積極的な情報発信を
なお、田中氏は旅行会社の課題について述べた一方で、障がい者に対しては「スタッフがお客様に質問することを怒らないでほしい。毎回同じことを尋ねることを不快に思う方もいるが、お客様の状態は以前と同じとは限らない」と理解を求めた。モデレーターの原氏も「旅行会社は知識が不足しているので、障がい者の方にはもっと要望を届けてもらいたい」と話した。
田口氏は「障がいの重さは外見だけではわからない。障がい者側も、必要なことは自ら伝えなければならない」と語り、旅行会社と積極的にコミュニケーションを取るよう呼びかけた。さらに「障がい者側も『車椅子利用者は何日前までに旅行会社に伝えてください』といったルールはしっかり守らなければならない」と指摘し、「配慮されたいなら自分たちも配慮し、お互いを思いやるべき」と語った。
紋屋の高尾氏は、障がい者と同居していない家族が旅行を申し込む場合には、障がいの状況をよく理解していないケースがあることを説明。「現場でのミスマッチにつながるので、大変かもしれないが旅行会社にはしっかりと確認してもらいたい」と話した。
最後は原氏が「心のバリアフリーはまだ始まったばかり。広い視野で障がい者とコミュニケーションを取ってもらいたい」とコメント。「東京五輪を契機に、国をあげて心のバリアフリーを実践していければ」とまとめた。