「心のバリアフリー」で障がい者の旅行を推進-ツーリズムEXPO
障がい者と旅行会社のコミュニケーションが重要
細かなニーズの確認でミスマッチを防ぐ
障がい者の旅行市場は「確実に存在」
事前の説明で顧客の理解を
ANAセールスCS推進室ツアーアシスト課課長の田中穂積氏は、同社の障がい者旅行に関する取り組みを紹介。09年に予約センター内に「おからだの不自由なお客様の旅行相談デスク」を立ち上げ、現在は独立した専門部署として、4名体制で高齢者や障がい者、ツアーの販売代理店などからの相談を受け付け、旅行の手配、現地情報の提供などを実施していることを説明した。旅行取扱件数は16年度には1734件、送客人数は5370人にまで増え、取扱高は前年の約2倍の8億5500万円にまで増加。田中氏は参加者に対して「お手伝いの必要なお客様は確実に増加しており、旅行市場は確実にある」と積極的な取り組みを呼びかけた。
ちなみにANAセールスのツアーに障がい者専用商品はなく、障がい者は通常のパッケージツアーに参加している。田中氏は「お客様をいかにケアし、できることとできないことを明確にして手配するかが重要」と述べ、そのためには障がいの程度を細かくヒアリングするとともに、「旅程管理を優先することを事前にしっかり説明し、理解してもらうことが大切」と話した。例えば欧州の古都を訪れる添乗員付きのツアーでは、石畳で移動が難しい場合は車椅子利用者にホテルで待機してもらう場合もあり、現場での混乱を防ぐため、添乗員には事前にしっかり情報を提供しているという。
田中氏はそのほか、事前にJATA会員の旅行会社に実施したアンケートをもとに、旅行会社が抱える課題や悩みについて説明。アンケートでは「手配方法がわからない」「手配ミスや事故にあった場合が心配」という声が多かったことを伝え、「兼任でも構わないので、社内にバリアフリー担当者を置けば経験が蓄積される」と話した。
「南房総白浜 季粋の宿 紋屋」の代表取締役社長の高尾憲資氏は、麻痺などで箸をうまく使えない宿泊者向けに専用の「自助箸」を用意するなどのサービスをおこなっていることを紹介。「我々の旅館にはエレベーターがない、お風呂に手すりもない『バリア有りー』だが、それでも来ていただけるお客様にできるサービスをしたい。お客様のお話をよく聞いて、何かできることがないか考えることが『心のバリアフリー』では」と語った。