ムスリム旅行者獲得に向け「ハラールシンポ」-ツーリズムEXPOで
正しい対応で旅行者の不安軽減を
マーケティングの重要性も
啓蒙活動に加えてマーケティングを
ハラール対応で広がるビジネスの可能性
シンガポールを拠点に、ムスリム旅行者向けのホテルや旅行商品などの格付けをおこなうクレッセントレーティングで最高経営責任者を務めるバハルディーン・モハメッド・ファザール氏は、日本の旅行業界がムスリムをターゲットにするためには、ハラールに関する啓蒙活動を継続して実施し、今後はマーケティングにも注力する必要があると述べた。同氏は、自治体や観光局と協働してムスリム旅行者向けにオーストラリアや済州島の観光ガイドを発行した事例を紹介し、「(日本も)ムスリム市場にアピールする適切なチャネルが必要だ」と強調した。
同氏は加えて、今回の来日中に秋田県の民宿や旅館を訪問したことも報告し、「小さな宿泊施設ではシーフードやベジタリアンフードを用意しやすいため、規模の大きなホテルよりもハラールフードを提供しやすいと感じた」とコメントした。また、規模の大きなホテルであっても、ホテル内の複数のレストランのうち1店をハラールにすることなどで、ムスリムの受け入れが可能になるとの見方を示した。
東京に本社を構えるハラール食品専門商社の二宮で営業課長を務めるアミルディン・スプリアディ氏は、国内での取組例として国際協力機構(JICA)の研修施設内にあるレストランを紹介。同店ではハラールの食肉を取り扱いつつも食器は再利用しているため、ハラールな食事を提供しているわけではないが、「ハラールではない」という事実を食堂前に掲示しており「それを確認した上で食事をするムスリムもいる」と説明した。石毛氏は、「個々人の考え方により、ハラールでない食材や料理も口にするムスリムは存在する」と補足し、「ムスリムが選択するために、食事を提供する側は正しい情報を開示することが重要」と述べた。
そのほか、パネルディスカッションではレモン氏がイスラム教における「タイブ」という概念について紹介。タイブが「良い」「清い」「安全」「衛生的」などを意味しており「非ムスリムにとっても良いもの」と説明した上で、「ハラールに取り組むことは、より広い市場を相手にすることでもある」とコメントした。スハイミー氏も「ハラールフードは食材の生産から調理までの管理が行き届いており、マレーシアでは健康食として認識されている」と語り、JAKIMによるハラール認証時には「タイブであること」も要件の1つに定めていると伝えた。