トップインタビュー:アゴーラ・ホスピタリティーズ代表取締役社長の浅生氏

多種多様なホテルコレクションで季節波動を平準化
コレクションを活用した訪日ルートの形成も

-多様な宿泊施設をコレクションとするメリットは

9月7日には、都内で旅行会社やメディアなどを対象にした商談会「AGORA Collection」を開催。加盟宿泊施設全体でピーアールをおこなった 浅生 季節波動の平準化がはかれること。リゾートのみの運営では稼働率は50%程度だろう。しかし、我々は都市型ホテルをコレクションに加えているため、全体の稼働率は80%。ブランドを色々扱っているメリットと言えるだろう。

 宿泊業はお客様のいるところでしかビジネスができないため、お客様がいるところに我々が移動するという発想で展開している。例えば「野尻湖ホテル エルボスコ」は12月から3月はクローズしている。その間、スタッフは繁忙期の宿泊施設に移っている。「伊豆今井浜温泉 今井荘」は2月、3月が河津桜で満室。都市型ホテルも12月、1月は忘年会や新年会でいっぱいだ。

 スタッフがどの宿泊施設でも対応できるようにするためには、会社のコンセプトの共有化が重要。会社の理念と価値観の共有をはかるため、研修をかなりの時間をかけておこなっている。皆が同じ価値観持っていればチームワーク、信頼関係が成り立つ。今日からここのホテルに行く、という場面でも、すぐに現場に入り、即戦力として仲間と信頼のもと業務を遂行できるだろう。


-貴社のターゲットを教えて下さい

浅生 全体としては、日本人を含む全世界からの観光目的の旅行者が我々の主要ターゲット。あとは、宿泊施設ごとに細かく異なっている。各宿泊施設に全てそれぞれのコンセプトがあり、具体的なペルソナ(仮想顧客)を設定している。ペルソナを元にブランディングや空間デザイン、サービスの設計までおこなっている。

 例えば、今年7月11日にリブランドオープンした軽井沢の「旧軽井沢ホテル」では「Socialites(ソーシャライツ)のための飾らない時間」をコンセプトに設定。ソーシャライツとは、富裕層で、自分たちが得た富を社会貢献に役立てるような意識を持った方々のこと。ペルソナとしては、37歳の男性とその妻、6歳の子どもという家族を設定し、普段何の車に乗り、何を食べ、どういうライフスタイルを送っているか、というところまで具体化した。

 旧軽井沢ホテルではバトラーがつきっきりでサービスするが、高級で肩肘張る空間ではなく、ゆっくり過ごしていただくことを想定している。さらに、ホテルの収益の一部をNGO団体「ルーム・トゥ・リード」に寄付し、団体を通してカンボジアの識字率の向上や、子どものための図書館づくりなどに貢献している。

 また、浅草の都市型ホテル「アゴーラ・プレイス浅草」は「スタイル MY ステイ」がコンセプト。客室内のアメニティをシンプルにして、ロビーのお店で加湿器やマッサージクッションなど、お客様が自分ならではの滞在を創りあげるために必要な小物を購入、レンタルすることができる。LCCのモデルをホテルに活かした「ローコストアコモデーション」として展開しており、海外からのFITで、日本に憧れを抱いている台湾からの女性2人組などをターゲットに立ち上げた。8割から9割が海外からの訪日外国人旅行者で、6割は台湾からのお客様だ。

 こうした具体的なペルソナを設けるメリットは、スタッフが共通認識を持つということと、サービスを提供する際に全くブレないということ。伝えるメッセージ、提供するサービス、サービスの仕方、掛ける言葉遣い、といったものを1つのターゲットに集約している。