観光立国10年の課題-産業全体の問題点と課題を議論

  • 2013年2月19日

いい子にしていると損をする
前向きなルール作り、法整備が急務

 議論では個々の事業や産業界が解決すべき自助努力の部分だけでなく、収益体制の改善や競争力強化に向けた規制やルール作り、枠組み作りなど行政の手腕に対する要望も求められた。

 アウトドアアクティビティ会社キャニオンズのハリス・マイケル・ジョン氏は、国際競争力に関する議論の中で各国の事例を示しながら「基準づくりは国の仕事。国が目指す戦略のもとに評価をすれば、その方向に持っていける」と指摘。競争力の向上には、評価システムの使い方も必要であると強調した。

 また、前出の大西氏は収益力の向上に関する議論で、地域再生の財源作りの必要性を強調。現在の成熟市場にあわせた整備をするための体力が観光地にないとして、入湯税の引き上げや宿泊税などの法廷外目的税導入の検討を求めた。すでに北海道では「入道税」の検討を始めているという。

 宿泊税については沖縄ツーリスト代表取締役社長の東良和氏が「公平性の問題がある」と指摘。例えば、ドミトリーやゲストハウス、ウィークリーマンションなど、宿泊業から外れた営業をしている事業者は賦課金を免れているとして、「日本はいい子にしていると損をするような状況にある。そこを是正する必要があるのではないか」と提起した。

 この点については、参加者の問題意識発表の時点で菊間氏もインバウンドのスルーガイドの問題やアウトバウンドの取引実態と日本の法規制の差を指摘。オペレーターの登録制の導入やグローバルスタンダードにあわせた法整備の必要性を強調した。

 このほか、山形の滝の湯ホテル専務取締役の山口敦史氏も旅館業が抱える問題に対し、法の対策を求めた。例えば大規模な旅館が倒産した場合、その施設が実際の半分以下の価値で売買されると、再開後は安価な宿泊料金で営業できるようになる。そのため、近隣の施設は無理をしてもその施設を買い取り、それによって経営が苦しくなるという悪循環に陥ることがあるとし、「何らかの手段を打つ必要があるのではないか」と語った。