JATA消費者相談室、旅行会社の疑問に回答-
JATA旅博セミナーで

  • 2011年10月12日

フライトのキャンセル・遅延の際は
権利義務関係を明確化

JATA総合企画部消費者相談室室長代行の金子眞一氏  航空券を扱う旅行会社にとって、フライトのキャンセルや遅延は頭の痛い問題だ。手配旅行でこの問題が起こった場合、お客様への対応はどうするのだろうか。

  金子氏はこの相談に対し、標準旅行業約款の手配旅行契約の第2条1項の手配旅行契約の用語の定義を参照した。手配旅行とは「手配することを引き受ける契約」だ。つまり、手配旅行契約に基づいて旅行会社は航空機座席の手配を行ない、チケットを渡せば旅行会社の手配業務は終了となるため、その後発生するフライトのキャンセルなどは航空運送契約によって航空会社が対応することになっている。そのため、金子氏は「旅行会社として対応は不要」と回答した。

 実際には航空会社によって対応、認識、意識の差があるものの、「営業上の配慮からか、旅行会社は必要以上のことをしてしまうことがある」と金子氏は指摘する。そうすると、航空会社の責任範囲のものまでお客様に求められるケースもあり、ともすればお客様が旅行会社に対して賠償を請求することもある。そのため、金子氏は「本来の権利義務関係を混乱させないよう注意をする必要がある」と指摘する。


顧客からの照会依頼の応否
後々のトラブル防止を念頭に判断

会場には熱心に考える学生の姿も 顧客から旅行代金の明細の明示を求められた場合はどうしたらいいか、という相談もあった。企画旅行の場合、旅行代金という包括料金で実施することを旅行業約款で示しているため、金子氏は「応じる必要はない」と回答した。むしろ、明細を示したことで後にトラブルになることもあるため、金子氏は極力明示しないようにと助言した。ただし、手配旅行の場合、話は別だ。手配旅行契約で複数の旅行サービスの手配を引き受け、包括的に旅行代金を呈示した場合、個々のサービスについて明細を別途示す必要がある。

 また、未成年からの申込があった場合のトラブルについての相談はよく寄せられるが、今回のセミナーでは「20歳を超えた大学生から旅行の申込があったが、その親から旅行内容や同行者の情報提供、および取消の連絡があった場合どうしたらいいか」という質問があった。これについて金子氏は民法第4条を参照し、「青年の条件として年齢はあるが職業という概念は一切入っていないため、大学生でも20歳以上であるなら保護者からの旅行内容などの問い合わせ、取消依頼をそのままお受けするのは適切ではない」と答えた。

 20歳を超えた学生の親からの照会など、旅行会社として応じるべきか判断が難しい部分があるかもしれない。しかし、顧客の情報を開示することは個人情報保護法にも絡んでくることもあり、その後のリスクを考慮した上で、旅行会社として対処できること、できないことをはっきりと理解しておくことが大切だろう。


法律論より「聞く姿勢」
苦情対応の極意は「急がば回れ」

  一連の質問に対する回答やお客様からの苦情やトラブルについては、旅行業約款や旅行業法をはじめとする法律に基づいて対応することは可能である。しかし、金子氏は「解決を早めようと初期段階から法律論をかざし、実際には逆効果になる」と、まずは話を聞く姿勢をとり、「急がば回れ」を実践するよう助言した。

 なかには理不尽な話をするお客様も稀にいるが、話を聞くことで相手の感情をなだめ、「トラブルの真の原因」や相手が求めていることが見えてくるという。金子氏は「はじめから法律論をかざしてしまうことは決して良い結果にはならないことを理解してもらえれば」と改めて強調し、セミナーを結んだ。

取材:安井久美