潜在力秘める西日本クルーズ市場、寄港増加を背景に

  • 2011年9月15日

外国船の日本発着コース設定でマーケット全体の拡大へ
 
PTSクルーズデスク西日本担当担当課長の富樫菜穂子氏 2012年は西日本を中心に、外国船による日本寄港や発着クルーズが増加しそうだ。ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)のレジェンド・オブ・ザ・シーズに加え、15万トン級のボイジャー・オブ・ザ・シーズもアジアに配船し、日本には100回近く寄港する予定だ。特にボイジャーは2012年6月から10月の上海と天津発の20航海中に、福岡と長崎、沖縄、神戸などへ32回寄港することから、日本発着の特別設定クルーズも期待できる。このほか、クルーズプラネットとオーバーシーズトラベルは共同で、ホーランドアメリカのザーンダムをチャーターし、神戸発着で2本を運航。募集型企画旅行など商品化して販売している。

 外国船の日本発着クルーズが増えることで「(日本発着クルーズを好んで)日本船を選んでいた人の選択肢が増える」と話すのは富樫氏。日本船よりも料金が安いため、「今までとは違うマーケットが掘り起こせるのでは」とも期待する。例えば、アメリカでは若いカップルやファミリーなどの利用が多く、日本でもこうした客層がクルーズを身近な存在に感じてもらえれば、マーケットが伸びると見込んでいる。

 一方、澤田氏は外国船と日本船の価格差が認識された際の影響を指摘する。例えば、レジェンド・オブ・ザ・シーズの博多発着クルーズ10日間の販売額は約15万円で、1泊1万5000円程度と日本船と比べてリーズナブルな設定だ。個人的な見解としながら「クルーズ振興のためには日本船の価格を下げる努力が必要なのでは」と話し、例えば、「チップ制の導入などで人件費を抑えればクルーズ価格を下げることにつながる」とのアイディアも示した。

 また、日本発着コースでは、クルーズでしか行けない都市や街など「寄港地の工夫も必要」と富樫氏は提案する。現在、定番の寄港地となっている屋久島も、鹿児島経由のフライトやフェリーが必要で行きにくい状況にあったが、そこを逆手にとってクルーズに組み込んだことで人気コースとなった。今後は、ユネスコ世界遺産に登録された小笠原諸島など、話題性もあり、需要も高く、さらにアクセスしにくい場所が寄港地となれば、クルーズの付加価値となり、販売しやすくなるはずだ。


旅行会社もクルーズのイメージ払拭を

 両氏が今後のクルーズ販売の拡大に向けて共通するのは、「なぜクルーズがよいのか」というポイントを消費者に対して明確に伝える提案力が必要だということだ。

 澤田氏は、一般的に思われている「豪華客船に乗る、という呼び込みをやめて、スタンダードルームもスイートルームもあると多面性をアピールしたい」という。また、前述のねぶた祭りと花火大会では、通常のツアーでは宿泊施設を確保するのが困難であり、会場から2時間ほどかかる場所にならざるを得ないケースもあるが、クルーズは港に停泊するので花火大会の会場に近く、「ホテル付きで移動できるメリットを旅行会社の担当者が提案できていないのでは」と指摘する。また、もっとクルーズを知ってもらうためにも「市民クルーズや、体験してもらう機会づくりが必要」だという。

 客層の拡大については、富樫氏は「若年層でもハネムーナーの需要はある。ハネムーン自体、旅行会社を通じた申し込みが多いので、クルーズもひとつの選択肢として提案できる」と話す。クルーズのメインの顧客層となっているのはシニア層だが、裾野が広がり始めている今、メインの客層以外にもクルーズが売れるということを認識して販売に当たることが、今後のクルーズ販売には必要となってくるだろう。

取材:秦野絵里香