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HIS、雇調金不適正受給で63億円を自主返還、矢田社長「認識、管理体制甘かった」-子会社は不正受給で1億円返還

  • 2025年1月28日

HIS矢田素史代表取締役社長

 HISは27日、雇用調整助成金に関する不適正受給が発覚したことを受け、その一部を自主返還すると発表した。また、同社連結子会社であるナンバーワントラベル渋谷においては不正受給が確認され、返還対応を進めることが決定した。この結果を受け、代表取締役社長の矢田素史氏は同日の会見で、「2021年の子会社によるGoToトラベルでの不正事案後に再発防止策を講じてきたが、認識・管理体制が甘かった。(今後は)更なるガバナンス強化を行っていきたい」と強調した。

 発表によると、HISでは2020年3月から2022年12月にかけて雇調金約242.6億円を受給したが、従業員の就労があった日も休業日として申請されていたことが判明。外部専門家を交えた調査の結果、約62.6億円が不適正な受給に該当するとされ、2025年1月22日に東京労働局から返還通知を受け取り、27日に取締役会で自主返還を決議した。

 就労の有無に関する調査結果によると、就労があったと判断した申請日のメール・基幹システム等の操作履歴が確認された回数は、1回(30.6%)、2~5回(34.9%)、6~10回(12.1%)、11回以上(12.8%)、その他(9.5%)。特別調査委員会の委員長を務めるアンダーソン・毛利・友常法律事務所の安藤紘人弁護士は、今回の事態を招いた要因として「助成金制度に対する理解不足」と「労務管理の不備」の2点を指摘。従業員への聞き取りでは、メール1通などの短時間の活動は業務と認識していなかったことや、矢田氏は「出社している従業員が代わりにメール返信を行うなど、グループ単位での仕事の運用ができていなかった」と振り返った。

 一方、ナンバーワントラベル渋谷では、2020年3月から2023年3月の期間に約1.1億円の雇調金を受給していたが、調査から、実際には就労した日に休業したとする虚偽の申請書類を作成し、不正に受給が行われていた。同社は27日、約1.3億円(違約金含む)を速やかに返還することを決議。また、責任を明確化するため経営陣の報酬減額や、代表取締役社長であったRanjan Kumar Dasdeb氏の辞任勧告を実施し、同氏は2024年12月26日付で代表者および社長の地位を辞任している。

 なお、その他連結子会社、及び受給当時子会社だった計32社を対象とした調査は現在も進められており、2024年10月期決算は調査報告書受領後に発表する。加えて、矢田氏は「特別調査委員会から出される原因の究明、再発防止策等の提言を踏まえながら、より強力なガバナンス体制の強化に向けた再発防止策を速やかに報告する」とコメントした。