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地域に分け入るJAL社員たち~山形県・前編~

  • 2022年6月29日

キラーコンテンツをフックに知名度の底上げを、尾花沢市
ありのままの自然、独自の伝統芸能、着地型観光素材の商品化を目指して、鮭川村

 客室乗務員や業務企画職など、幅広い職種の社員が各都道府県の自治体等に出向している日本航空(JAL)。シリーズ「地域に分け入るJAL社員たち」では、出向者と自治体の担当者、それぞれの目線で地域の魅力や課題、相互への期待などを語っていただくことを通して、ポストコロナに向けた地域創生を考えていく。

 人気の温泉地や古刹、豊かな自然と、魅力的なコンテンツが点在する山形県。前編では、知られざる名所を磨き上げ、総合的・地域横断的な情報発信を進める尾花沢市と鮭川村の取り組みを紹介する。

銀山温泉(写真提供:尾花沢市)

山形県尾花沢市

商工観光課 観光支援員 神尾高宏さん

 2000年7月にジャパンツアーシステム(現ジャルセールス)に入社。東北地方で法人や自治体への旅行商品の販売、国内・海外団体旅行企画・添乗業務、業務渡航手配や自治体との路線利用促進事業を担当しました。2021年4月より尾花沢市へ出向しています。

 大正ロマンの風情溢れる銀山温泉は人気で、温泉街の奥には温泉名の基となった銀坑洞の見学もできる白金公園があります。また、市中心部に位置する「徳良湖」は大正時代に造られたため池で、昨年築堤100年を迎えました。築堤の土搗き作業時の掛け声から生まれた「土搗き唄」が花笠音頭の基となり、休憩時間にその唄に合わせて踊ったのが花笠踊りの原形と言われています。

 今後は銀山温泉というキラーコンテンツをフックに他の観光素材の知名度を上げていきたいです。特に徳良湖周辺には高評価のキャンプ場やパンプトラック場をはじめ、寛ぎの日帰り温泉やレストラン、カフェ、内陸では珍しいヨット倶楽部など様々なアクティビティが体験できる施設が揃っています。この秋には社会人や学生の研修合宿にも利用されている徳良湖自然研修センターのコワーキングスペース化が完了するので、その環境を生かしたイベントや企業内研修、異業種交流等での活用や、子供たちの学びの場としても活用してほしいと思います。

家族で楽しめる徳良湖パンプトラック(写真提供:尾花沢市)

 また、冬場のアクティビティとしてスノーモビルやスノーバギーでのバックカントリーツアーは迫力があります。深雪の中でのコーヒーブレイクは静寂につつまれた癒しの時間です。インストラクターが案内しますので初心者でも安心です。サンビレッジ徳良湖オートキャンプ場では昨年冬より本格的に冬キャンプを開始し、高評価を得ています。

 様々な観光素材がそれぞれで情報発信をしていますが、総合的な情報発信は今まで以上に大切になると考えます。

尾花沢市商工観光課 課長 間宮康介さん

 2000年入庁。福祉や社会教育、建設などを経験し、2021年より商工観光課の課長を務めています。幅広く興味を持つ性格で、「広く浅く何でもやってみたい」と思うことが多く、チャレンジすることが好きです。コロナ禍の最近は、長年趣味としているバイクで仲間と観光スポットを巡っており、最近は「道の駅巡り」にハマっています。

 尾花沢市は、山形県の最北東部、奥羽山脈や出羽丘陵などの山々に囲まれた盆地に位置し、平野部でも積雪量が2メートルに及ぶことがある豪雪地帯です。豊富な農産物が自慢で、なかでも夏スイカの生産量は日本一。「尾花沢スイカ」のブランドで全国各地に出荷されており、みずみずしい甘さとシャキッとした食感が特長です。また、「尾花沢牛」の肥育頭数は東北一。雪国尾花沢の気候で育まれるその肉は、霜降りでやわらかく、甘味があります。作付面積県内一の「尾花沢そば」は、「原種最上早生」という品種を守り、味もよく香り高いそばが打ちあがります。

山形名物「板そば」。最上早生のそばは、香り、甘味とそば好きにはたまらない逸品(写真提供:尾花沢市)

 俳人松尾芭蕉は、山刀伐峠から尾花沢へ入り、友人鈴木清風を訪ね、10泊も逗留しています。清風の手厚いもてなしに、芭蕉は旅の疲れを癒したといいます。現在でも、尾花沢市民はこうしたおもてなしの心を大切にしています。

 人口減少が課題となっている本市では、関係人口の拡大による減少率の抑制が急務です。神尾さんには、民間企業のノウハウを生かし、アフターコロナも見据えた新たな方向性を構築していただけるよう期待しています。

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