豪NSW州郊外の美しい町「オレンジ」、ワインなど知られざる魅力紹介-世界遺産ブルーマウンテンズ最新情報も

  • 2022年6月2日

「時を忘れた町」やナチュラル系カフェなど周辺観光も多彩

 お酒を飲むばかりがオレンジの魅力ではないので、周辺観光についてもご紹介したい。

 参加者一同、最初は「なんでこんなところに??」とハテナマークがいっぱいだったもののいつの間にか随分満喫していて時間をオーバーしてしまった場所が、オレンジから南に40分の距離にあるカーコアー(Carcoar)。1821年に欧州からの入植者たちが形成した村で、一時は金などの鉱業で栄えたものの、現在は「時を忘れた町」「オーストラリアで最も手つかずのまま残る歴史ある村」などと表現されている。

絵本の世界のような整った美しさ

 使われなくなった駅舎や線路、古い教会、使われなくなった鉱業用機械、美しい小川などが小さな村の中にぎゅっと詰まっている様子はさながらテーマパークのようだった。

廃線を自由に散策できたりするユルさもちょうどいい

 一方、もう少し現代を生きているのがミルソープ(Millthorpe)の街で、オレンジから南に20分程度で着く。こちらは新旧のいいとこ取りができるということでシドニーからの行楽客も多いらしく、オーストラリアのレストランガイド「グッドフードガイド」で高評価を得るレストランも存在する。我々はThe Old Millというこじんまりしたカフェで軽食をいただいたが、こちらのカフェも「天然生活」や「暮しの手帖」などナチュラル系雑誌の愛読者を虜にしそうな可愛らしさで同行者のなかでの評判も上々だった。

The Old Millではレモンメレンゲケーキが名物。グルテンフリーのケーキなどのほか、しっかりした食事メニューも

 また、オレンジのユニークなプロダクトの一つが、地区の議会で初めて先住民族として議員となり副区長も務めたジェラルド・パーカー氏が2016年に立ち上げた現地ツアー会社「Indigenous Cultural Adventures」。地域のアボリジナルの人々が大切にしていた文化や伝統、知識を共有することを目的としているが、底抜けに明るくおしゃべりな同氏のキャラクターと、一方では現在の政治や社会と先住民族の関わりについて公職についていた経験から語られる内容は、これまで参加した他の先住民族文化体験とは一線を画す印象を受けた。

伝統食材「ブッシュタッカー」をいくつも味見できる体験や、アボリジナルとヨーロッパ人との初期の交流を今に伝える墓地を案内してくれるツアーも用意されている

ブルーマウンテンズに新アトラクション、高さ270mのゴンドラ屋上でスリル体験

 ブルーマウンテンズでの約1日の滞在で目玉だったのは、新アトラクション「ビヨンド・スカイウェイ・アット・シーニック・ワールド」。シーニック・ワールドでは世界で最も急勾配のトロッコ列車「レイルウェイ」、ロープウェイの「ケーブルウェイ」、そして渓谷の上を渡る「スカイウェイ」の3つが主力アトラクションだったが、このほど新たにスカイウェイのゴンドラの屋上に登ってしまう新アトラクションが完成した。

スカイウェイのゴンドラの上に登るのが「ビヨンド・スカイウェイ」。若干風もある日だったが思いのほか揺れは感じなかった

 身体中にベルトやハーネスを付け「命綱」も常に2本が付いた状態で訓練を受けた係員の案内でゴンドラの上に立つと、恐怖で足がすくみつつも360度広がる景色は圧巻。当然だが風をさえぎるものは一切なく、上では温かいココアも提供されたが暖かい格好をしておいたほうが良いだろう。

天気が悪くなければ「スリー・シスターズ」もきれいに見える
ブルーマウンテンズでは熱帯雨林のなかで自然や野生動物について知ることのできるエコツアーにも参加。たくさんのカンガルーたちに出会えたほか、森林火災(ブッシュファイヤー)からの驚異的な回復力についても学べた

 なお、視察ではブルーマウンテンズへの途上、ポートランド(Portland)も訪問。こちらは1902年にオーストラリアで初のセメント工場が建てられた場所で「シドニーを造った町」と表現されるが、1991年に工場が閉業。しかし現在はその跡地をアートやイベントを育て発信する舞台として作り変え町おこしプロジェクトが進められており、その中心である元工場の「ザ・ファウンデーション」ではすでに数々のイベントや大掛かりな結婚式なども開催されているという。

施設外観。工場跡地のイベント会場が2つできているほか、屋外にもアート作品を展示。また街なかもストリートアートが賑やかに壁を飾っている
取材協力:オーストラリア政府観光局、ニューサウスウェールズ州政府観光局
取材:松本裕一