【若手ホテリエに会いに行くvol.5】香林居 山野莉央さん
コミュニケーションを通じて「映え」の向こう側へ
目指すのはホテリエの価値向上
山野 ゲストには、ぜひ「このホテルに泊まった意味」を感じていただきたいと思っています。当ホテルは「金沢らしさ」や「日本らしさ」というよりも、香林坊エリアに根差しているのが特徴で、ホテルの名前の由来やなぜ蒸溜器やアイソレーションタンクを設置しているのかという背景を感じていただき、インテリアも評価いただいています。コミュニケーションを通じて、「映え」の向こう側にゲストをお連れできたらと思っています。
現在、館内の体験コンテンツは宿泊者に限定していますが、今後は一般開放もしていきたいと考えています。金沢は地域の繋がりが強いエリアなので、地元の知り合い同士で貸し切りサウナを利用するなど、どんどんコミュニティが広がっていけば嬉しいなと思っています。
山野 前職時代には、「第二の母」と言ってくださり今も文通を続けている素敵なゲストとの出会いなど、本当に色々なことがありました。そして正に今は、人を育てるという重要な役割へのチャレンジに燃えています。人の成長って本当に尊い。自分が育ててもらっていた頃を思い出しながら、スタッフからもっと自然な笑顔を引き出すにはどうすればよいか、お客様との会話に悩むスタッフにどのようなアプローチをすべきか、毎日トライアンドエラーを繰り返しています。
山野 たくさんいますが、敢えて挙げるなら、ホテルニューオータニのホテル・イン・ホテル「エグゼクティブハウス 禅」の高畑支配人と江川副支配人です。高畑支配人はホテル業界外から転職された女性で、人望が厚くたくさんの人から愛されていて、ゲストが皆、支配人に会いに来るんです。そして支配人という立場にも関わらず、忙しいときは綺麗なスーツのままガシガシお皿を洗うような方です。現場で経験した大変なことは立場が変わっても絶対に忘れてはいけないということを体現されており、感銘を受けました。
江川副支配人は身体が大きくて声が低くて、見た目は怖いのですが(笑)、とても愛のある方です。先日1年半ぶりにホテルニューオータニを訪れたときには、「おかえり」とハグしてくれて、思わず泣いてしまいました。お客様からのクレームに率先して対応し、その方と仲良くなって帰ってくる方で、当時かかってくる電話は、社内からもゲストからも「江川さんいる?」が一番多かったです。
お2人のチームの作り方が本当にお上手で、今となっては考えられないようなミスをしていた私を育ててくれた恩人です。自分もあんなチームを作りたい、スタッフに伸び伸びと成長してもらいたいと思っています。本当は私自身もあっぷあっぷな状態なのですが、スタッフが「こんな風にやってみたい」と希望を伝えてくれたら、「やってきな!」と言うようにしています。その結果起きたことは悪いことも含めて全て自分に降りかかってきますが、お2人の真似をしてトライしています。
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