データとデジタル化で旅行中のショッピング体験を再構築する

  • 2022年5月9日
  • 出典:OAG

旅行者の新しい消費行動への対応

 空港ターミナルでの実際のショッピングとデジタルeコマースとの融合は、消費者層を広げ、消費者の利便性を高め、デジタルインサイトを活用してよりパーソナライズする機会を生み出す。

 2020年、マレーシア空港運営会社はeコマース・プラットフォーム「shopMYairports」を立ち上げた。旅行者は空港内で商品を購入し、指定カウンターで受け取るだけでなく、ゲートや機内、自宅まで送り届けてもらうこともできる。カナダのトロント・ピアソン空港は、より広く開かれた独自のデジタル・ショッピング体験を生み出した。このプラットフォームはDufry(※編集部注:グルーバルに展開する旅行小売業者)との提携によるもので、これまで旅行者しか購入できなかった限定デザイナーズ商品を、誰もが自宅で受け取れるようになった。

 また、多くの空港では、旅行小売店や飲食店向けにモバイル注文サービスを導入している。彼らはGrab Airport Marketplace や AtYourGate のようなチャネルパートナーを通じて、あるいは UberEats のようなアプリサービスと提携して、フードデリバリーシステムを拡大し、より多くの消費者にリーチしようとしている。

  自律型配送機「オットボット」 これらのサービスは、乗り継ぎ便の利用が増えるなか、空港での行列を避け、搭乗時間に遅れたくない多忙な旅行者に応えるものだ。また、モバイルオーダーサービスは、店内での買い物を嫌う旅行者層――保安検査後に売店に寄らず、出発ゲートに直行する旅行者――に、ショッピング体験を提供する手段にもなる。搭乗口での受け渡しサービスを提供するアプリは、手渡しのほか自律型配送機「オットボット」での配送にも対応し、対面での購入を避けたがる顧客と小売業者とを結びつけている。

 最近の調査では、今日の消費者の69%は、パーソナルで、かつリアルでのチャネルとデジタルチャネルで一貫性のある顧客体験を求めているという。これを受けて、さらに多くの空港や航空会社が、データや自動化、セルフサービス、モバイル技術を活用し、効率とカスタマイズ性を高めている。

 例えば、アムステルダム・スキポール空港、ダラス・ラブフィールド空港、シカゴ・ミッドウェイ国際空港は、空港内の小売業者と提携した「自動ショッピング体験」を始めた数少ない空港だ。トロント・ピアソン空港は最近、空港で初めてeコマース・プラットフォームを立ち上げ、これまで空港でしか買えなかった商品が自宅へ取り寄られるようになった。シンガポール航空は、顧客との繋がりをより強固にするため、ロイヤルティや決済プログラム、機内Wi-Fi、エンターテイメント・システムを進化させた。

 航空会社や空港の小売店舗は、デジタル・エンゲージメント(および顧客データ収集)の機会を増やすことで、より良いサービスを提供し、顧客を惹きつけることができる。

 新しいデジタル・エコシステムで成功を収めるには、空港店舗や旅行小売業者は、不動産の実店舗という概念を超えて拡大し、顧客体験に焦点を当てる必要がある。デジタルにフォーカスした小売形態をいち早く導入した旅行小売業者は、デジタルの選択肢を増やし、その範囲を広げることで、顧客が望むものを、望む場所で、望むときに提供しているのだ。