『デジタルとリアルが融合』した旅行会社の新モデルとは?-JATA経営フォーラム
キーワードは「OMO戦略」
4つの会社分類ごとにモデル会社を設定
日本旅行業協会(JATA)は3月まで「JATA経営フォーラム2022」をオンライン開催中だ。7つある分科会のうち、分科会BではJATAが2019年に発足した「国内旅行マーケットにおける新たな役割研究会」のメンバーが参加した。同研究会では「デジタル×リアル融合による新しい旅行会社のビジネスモデルのあり方」をテーマに、旅行会社の業種ごとのデジタル化への対応について「店舗型旅行会社」「製販一体型旅行モデル」「着地型旅行モデル」「中小旅行会社」の4種類で取りまとめを実施。分科会では各パネリストがそれぞれの内容を発表した。
店舗型旅行会社:オンラインとリアルの接点をシームレスに連動
(議論参加社:JTB、日本旅行、エイチ・アイ・エス、びゅうトラベルサービス)
分科会Bでは、モデレーターを務めたJTB総合研究所の山下真輝氏が、全体のテーマとして「OMO(Online Merges with Offline)戦略」を設定。「DXという言葉もあるが、ここではオンラインとオフラインが融合した形でのOMOというあり方について考えてみたい」と語った。
これを受け、「国内旅行マーケットにおける新たな役割研究会」の座長である日本旅行の三好一弘氏が、「店舗型旅行会社」の新しいビジネスモデルのあり方について提言を発表。三好氏は「ハードとしての店舗と社員をどう財産とするかを念頭に、新しいサービス変革を考えた」と前置きし、「オンラインをベースにしながらリアルでの顧客接点の価値を追求し、顧客満足を高める旅行会社版OMOのあり方」を提案した。
同氏は仮想旅行会社として「OMOツーリスト」を設定。ターゲットは絞り込まず、顧客それぞれにトラベルコーディネーターがデジタル技術を駆使してパーソナライズ化された提案をおこなう。三好氏は例として、地域と人との触れ合いを希望する場合は地域からの情報を元に顧客に提案し、低価格で手軽に旅行したいと希望する場合はオンライン予約を案内することを説明した。さらに、旅行会社からも顧客の旅行履歴や嗜好性に合わせた旅や、顧客のネットリテラシーに合わせた購入方法を提案するという。
三好氏は「デジタルの中に人が介在しなければ(デジタルの)効果は最大化しない」と語り、トラベルコーディネーターが顧客のニーズとのマッチングの精度を高める必要性を強調した。さらに、例えば店舗で旅行商品の説明を受けた後、ウェブサイトで申し込むといったように、顧客自身がウェブサイト、店舗、コールセンターなど情報の収集場所や商品の予約・購入方法を自由に選べるよう、オンラインとオフラインの接点をシームレスに連動させることの重要性を説いた。
加えて、同氏は旅行後に日常に戻った顧客と接点を持ち続けることがさらなるビジネスチャンスにつながると指摘。例として青森への旅行を挙げ、日常での接点で「青森に行く理由は酒蔵巡りだった」と分かれば、酒蔵のある他のエリアへの旅行や、地酒の通販など幅広い提案ができるとした。
その上で、三好氏は旅行会社が「OMOツーリスト」化するためには、商品の販売が主な役割だった店舗社員のモチベーションを維持するとともに、顧客や地域の情報を入手してマッチングするためのシステム・体制構築が重要であると強調。開発コストなどを考えると「複数の会社で共有できるようなプラットフォームが必要なのかもしれない」と語った。
このほか、店舗型旅行会社については山下氏も言及。今年4月にびゅうトラベルサービスが店舗を「びゅうプラザ」から「駅たびコンシェルジュ」へと変え、25拠点で開業する計画を紹介した。駅たびコンシェルジュではJR東日本グループとの連携を強化して観光流動の促進をはかる。具体的には地域コンテンツの磨き上げや、店舗を「地域のつながりの場」と位置付けてイベントなどを開催するほか、観光相談なども受ける。山下氏は「場所を使ったオフラインでの新しい価値提供」とコメント。三好氏も「『売らない店舗』までではないが、店舗を『旅行者に売るためでない機能』として位置づけているのは興味深い」と話した。