宿泊施設が販売価格を上げていくべき4つの理由―亜欧堂 堀口洋明氏寄稿
2. 借入を返済する必要
コロナ禍での大幅な売り上げ減少を乗り越えるために企業は借入を増やしました。今までより利益が増えなければ返済ができません。それは倒産する可能性が大きくなるということです。借入により倒産は比較的少数で済みましたが、今後は倒産増加が予測されています。
3. そもそも宿泊産業の構造特性
宿泊施設にはさらに固有の業界構造があります。その構造とは、主要コストが「部屋数(または利用人数)に応じて増加する」ことです。リネン費・アメニティ費・客室清掃費などは部屋数が増えるほど大きくなります。例えば客室稼働率80%、ADR 10,000円、GOP(Gross Operating Profit/ホテル業界独自の利益指標)を50%とした時、販売室数とADRをそれぞれ1%改善した場合のGOPを計算すると以下の通りです。
ADRを改善できた方がGOPの上昇率は高いことが確認できるでしょう。つまり、売上が同じであればADRが高い方が利益は出やすいのです。
4. 日本全体の課題
主要国で日本だけが実質賃金が伸びていません。その理由として価格が低水準に据え置かれていることが挙げられています。コスト上昇はコロナ禍以前からの世界的傾向ですが、日本企業は価格を上げずにコスト増加を吸収してしまったため、賃金引き上げができなかったという訳です。日本は多くの資源を輸入に頼っていますが、このままでは他国に「買負け」することが増えます。
この状況を打破するためにも、賃上げに結びつく価格引き上げが求められているのです。
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