宿泊施設が販売価格を上げていくべき4つの理由―亜欧堂 堀口洋明氏寄稿

  • 2022年3月25日

 宿泊施設の生き残りの為に「販売価格の引き上げ」を考えてみませんか。2020年3月頃より本格化したコロナ禍は丸2年が経過した今も終息せず観光業界も被害甚大です。長期化により社会構造そのものが変わってきていて、対応策を抜本的に考えなければなりません。その1つが「販売価格の引き上げ」なのです。

なぜ販売価格を上げるべきか

 現状には大きく4つの課題があります。

1. コスト増加は今後も続く

感染予防に関わるコスト
入口に設置する手指用消毒液や、施設によっては客室に消毒用のアメニティなど、感染予防関連コストが増えました。「ウィズコロナ」の間も必要不可欠なコストですが、コロナ禍が終息したとしても「ニューノーマル」としてお客様の衛生に対する意識が高いままであれば、継続して必要です。

環境負荷への対応
4月よりプラスチック資源循環促進法が施行され、宿泊施設や飲食店ではプラスチック製アメニティの提供量削減が求められます。有償販売やアメニティバイキング(フロントで必要なものをお客様が選ぶ方式)などもアリですが、高価格帯施設ほど顧客満足度の観点から「非プラスチック素材(バイオマスプラスチックや竹・木材など)」への変更を行うようです。残念ながら非プラスチック素材は従来品より高価でコスト増に直結します。この法律がなかったとしても、世界的に環境負荷軽減が求められています。サスティナビリティやSDGsに積極的でない企業は市場から敬遠される傾向にあり、避けて通れない問題です。

燃料・エネルギー価格の高騰
現在ウクライナ侵攻により燃料・エネルギー価格がさらに高騰中です。この問題は中長期的に続く可能性が高くなっています。侵攻中のロシアは世界有数の資源大国、石油産出量は世界3位でEUの天然ガス輸入の約5割がロシア産です。「力による現状変更」は国際的に許容されず、対ロシア経済制裁が広がり、結果としてロシアからの供給が減少し燃料不足に拍車がかかっています。

食材価格
ウクライナ問題は食材にも影響、ロシアが主要な産地となっている小麦や蟹・海老などの海産物が高沸しています。加えてコロナ禍による流通網混乱やポテトに代表される主要産地の天候不順、中国などの需要増加と国際的な買負け状態、そもそもは人口増加に食糧の供給が追いつかないなど、食材の価格高騰も当面続くと予測されます。

人件費
トラベルビジョンでもリクラボの久保亮吾氏が人材確保問題を取り上げておいででした。宿泊施設以外でも広く人手不足です。もともと人口減少により人手不足になる日本では、やはりこの問題も当面継続します。人手不足になれば人件費が上がるのは必然です。

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