ベストツーリズムビレッジに選ばれた美山町に行ってみた-RT Collection 柴田真人氏寄稿

  • 2022年3月23日

 第15回目のコラムは、昨年12月にUNWTO(国連世界観光機関)の「ベストツーリズムビレッジ」に選ばれた京都府南丹市美山町に足を運んだので、そのことについて書いてみたいと思います。

「かやぶきの里」美山町

 美山町といえば、39戸の茅葺きの屋根の家のある集落が有名で重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。その景観美から日本の原風景ともいわれており、日本昔話に登場する昔の家は美山町の茅葺きの屋根の家と同じように描かれています。

 恥ずかしながら、生まれも育ちも大阪なんですが、美山町に訪れたのは昨年が初めてでした。美山町と接点を持たせて頂いたのも昨年で、そのご縁もあって先月の2月17日から18日の2日間、美山観光まちづくり協会によって実施された第6回エコツーリズム大会に参加させて頂きました。美山町はエコツーリズムに長年取り組んでいますが、その出発点は人口減少が続く町でいつまで観光客を迎え入れることができるのか、そして観光が地域の経済やまちづくりに貢献していけるのかという疑問だったそうです。

 今回実施された第6回エコツーリズム大会では、1日目はかやぶきの里のガイドウォークや宿泊施設のインスペクション、美山町の事業者との商談会、かやぶきの里の夜のライトアップ鑑賞、2日目は景観保全のお話を伺った上で景観作物でもあるそば粉を使った蕎麦打ち体験や里山で採れる野草を使ったお茶作り体験のエコツアーに参加しました。

かやぶきの里ガイドウォーク(画像提供:一般社団法人南丹市美山観光まちづくり協会)

京都・美山北村かやぶきの里保存会の会長でもある中野忠樹さんのお話(画像提供:一般社団法人南丹市美山観光まちづくり協会)

美しい景観の背景を知る

 かやぶきの里のガイドウォークでは、茅葺きの屋根が3層からなっていることや屋根の上にある棟飾りの千木の本数の話、集落にある放水機の役割の説明、集落に住んでいる人のほとんどが中野さんと勝山さんの名字であることなど、興味深い話がとても多くありました。美山町の茅葺の屋根は福井県側に向いている北側の屋根は約15年、陽当たりのよい南側の屋根は約20年に1回のサイクルで葺き替えるそうです。そして、その費用はなんと約1,000万円(一部費用について補助金あり)、景観を保全していくにも想像以上にお金がかかるのだと思いました。白川郷の茅葺きの屋根と比べてみると美山町の茅葺きの屋根は4面、白川郷の茅葺きの屋根は2面と異なっており、そういった発見も興味深い内容となりました。

 蕎麦打ち体験やお茶作り体験では、最初に京都・美山北村かやぶきの里保存会の会長でもある中野忠樹さんから景観保全のお話を伺いました。そのお話の中で印象に残ったことの1つに「景観には農村生活があり、景観を保つためには農地の管理が大事」ということがあります。かやぶきの里の集落には実際に地元の方々が住んでおり、雪のないシーズンに集落を訪れて散策しているとおじいちゃん、おばあちゃんが毎日畑仕事をしている様子を見ることができます。そのため、いつ訪れてもきれいな畑の景観が維持されています。

 観光地経営を学んだ際に、観光地で一番よかったところはどこですかというアンケートで、体験ツアーや宿泊施設ではなく景観が上位にある場合は、観光事業者よりも農家の方々が景観を保全するためにしっかりと管理しているからという話を聞いたことがあります。美山町の景観保全も地域住民による農村生活や農地の管理があってこそのものなのでしょう。

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