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「素人が理想のホテルを創っています」投資家オーナーが実践するオペレーション―THE ACONCAGUA RESORTS 松原正恭氏

  • 2022年3月15日

固定観念を打ち壊し、「安泰なレッドオーシャン」で勝ち抜く

-日本の宿泊業にはどのような課題があると見ておられますか。

松原 率直に言うと、地方の宿泊事業は他の業界に比べて安泰すぎるレッドオーシャンなのかもしれません。自然災害が多い日本では、国の援助や様々な資本が潤沢に抽入されているケースも多い。また、土地を世襲で受け継いだ装置産業・不動産業的な側面も強いため、守りの気持ちが強く、新しい血が入ってこない。元々軋みが出てきていた事業構造にコロナが追い打ちをかけている状況で、今後この施設と同様の再生案件が続々と出てくるでしょう。

 そこで、宿泊施設の「再生フォーマット」を作りたいと考えています。オペレーションだけでなく、改修スキームや資金調達もマニュアル化していくつもりです。私にとってここは実験的なフィールドでもあるのです。

-今後の展開はどのようにお考えですか。

松原 今は山に囲まれているので、次は海でやりたいですね。近くなら天草などのエリアも魅力的ですが、九州にこだわらず、ここで培った再生スキームを活かしていきたいと思っています。

 また、この施設で貸切りイベントなどの需要も取り込んでいきたいです。ロビーは車で中まで入れるよう広く設計し、レイアウトも変えやすいように組んでいるので、夏は窓を全開にしてプールを楽しんだり、屋外で食事したりもできます。クラウドファンディングで作ったキャンプ場も活用したいと思っています。

-観光産業の従事者へメッセージやご提案をお願いいたします。

松原 「もっと外を見るべき」ということでしょうか。宿泊業では、迎えるお客様は別の業界の人たちなのに、そちらを深く知ろうとするよりも、仲間内ばかり見ている気がします。

 また、今だからこそ投資が必要だと思います。私たちは昨年10月にオープンしたばかりで、資金に余裕があるわけでもありませんが、お客様の声を聞いて既に改修計画に入っています。スタッフには「今仕込みをすれば、他所の時間が止まっている間に自分たちの時間は進む。コロナが明けたら一番良い波に乗れるはず」と伝えています。

 飲食業などはキャペックスや業態転換など柔軟に変化できますが、宿泊業ではできないという固定観念があり、それが重石となっている気がします。未来を犠牲にしたコストカットをするのではなく、自己破壊と創造の結果、減らせたコストをどこに投資するかが重要だと思っています。

-ありがとうございました。