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「素人が理想のホテルを創っています」投資家オーナーが実践するオペレーション―THE ACONCAGUA RESORTS 松原正恭氏

  • 2022年3月15日

固定観念を打ち壊し、「安泰なレッドオーシャン」で勝ち抜く

 南阿蘇の高台に位置するTHE ACONCAGUA RESORTS(アコンカグア・リゾーツ)は、熊本地震で被災した温泉旅館をリノベーションし、昨秋オープンした。宿泊業を手掛けるのは初めてというオーナーの松原正恭氏は、ときに業界の常識を覆し、自らもフロントに立ちながら、「自分で泊まりたいと思える宿」を追求する。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

松原氏

-はじめにホテルの紹介をお願いいたします。

松原正恭氏(以下敬称略) THE ACONCAGUA RESORTSは南阿蘇にある客室数12室のみのスモールラグジュアリーホテルです。2016年の熊本地震により源泉が絶たれてしまった温泉旅館を承継、リノベーションしています。コロナの影響で工事が中断されたり、プール水用の井戸を掘っていたら偶然源泉に当たり再度温泉を引くことができたり、という悲喜こもごものハプニングを乗り越えながら、2021年10月にオープンしました。

-宿泊業に携わるのは初めてとのことですが、ご経歴をお聞かせください。

松原 私は熊本県出身で、18歳から技術系の会社に7年在籍し、25歳の頃若気の至りでアメリカに行く友人に便乗して渡米、4年ほどアメリカで過ごしました。そのとき英語がまともに喋れなくても生きていけたことで、「やったもん勝ちだな」と価値観が変わり、「サラリーマンではなく社長になりたい」と思ったんです。社長業というのは「人と相対し、大金を扱う」イメージがあったので、不動産か車の仕事が近いかなと思い、帰国後は近所のディーラーで営業として働き始めました。しかし1年も経たないうちに倒産、社長は夜逃げ。営業の立場としてお客さんを守らなければと、図らずも社長業の真似事を始めました。

 ですが、自動車業界はレッドオーシャンで、早晩うまく行かなくなるだろうと思っていました。「柱一本」の経営スタイルも素晴らしいですが、私は自分を何もないボンクラだと思っているので、そんな人間が事業を継続していくには、時代の流れや浮き沈みを想定して、複数の柱が必要です。そこでディーラー業が軌道に乗ったタイミングで、美容室や司法書士事務所など4社を立ち上げました。加えて不動産投資も始め、それがコンサル・投資という新たな太い柱に成長。その中で、旅館を経営している友人に声をかけられ、リノベーションに携わったのが宿泊業の始まりです。当初は資金調達が役割だったのですが、気付いたらオペレーションまで手掛けていました。

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