地元に愛される老舗ホテル、支えるのは顧客との信頼関係と社員のアイデア―新潟東映ホテル取締役支配人 大倉善紀氏
コロナ禍でも稼働率を維持
「まずはやってみる」でヒット商品生み出す
大倉 若手や現場のスタッフを含む全社員からアイデアを引き出す努力をしています。毎月、PDS会議と称して、宿泊・宴会・レストランの各スタッフから、当月の新しい取り組みと成果目標を発表してもらい、Plan-Do-Seeのマネジメントサイクルを続けています。他にも懸賞を用意して、新商品や宿泊プランのアイデアを自由に発表するプレゼン大会を開催し、面白そうなアイデアは採用して商品化します。まずは実際にやってみる。駄目ならやめる。そうやって社員からどんどんアイデアを引き出す環境作りをしています。
朝食の鉄板焼コーナーでステーキを提供しようと発案したのも若手社員でした。私が「ステーキハウスの鉄板で目玉焼きを焼いて出そうか」とアイデアを投げたら、「朝食に目玉焼きを出しても普通でつまらない。ステーキを出しましょう」と逆提案してきました。
大倉 コロナ禍前のまだインバウンドが活発な頃に湯沢東映ホテルの支配人を兼務していた時期があり、新潟と湯沢の両ホテルで使える共通クーポンを宿泊客に配布してみました。宿泊優待や入浴無料などの特典クーポンです。するとクーポンを両ホテルで使うお客様が想定以上に多くいらっしゃいました。新潟に来訪する訪日外国人観光客は、ウインタースポーツを楽しむため12月から3月にかけて集中します。日本有数のスノーリゾート越後湯沢までは上越新幹線を使えばアクセスが良く、東京駅から越後湯沢駅まで最速75分、新潟駅からは最速40分です。新潟市と湯沢町にある2つの東映ホテルは新幹線を使えば60分で移動できます。アフターコロナではインバウンド客が戻り、県内にリゾート型と都市型の2つを持つ東映ホテルに連泊する旅行プランの需要が十分あると感じています。今後は旅行会社に旅行商品化を働きかけていくことも検討しています。
大倉 新型コロナウィルスの感染症が経済や生活をここまで変えてしまうとは、悪夢のような、まさかの現実です。しかし旅行は目的地を映像や画面で見るのとは違います。その土地に行って地域の文化に触れ、人と交流し触れ合うことで感動し、ストレスを解き放って幸せな気分になり、様々な実体験は沢山の学びにつながります。コロナ禍が収束すれば必ず旅行需要は復活しますし、インバウンドも必ず戻ってきます。ニューノーマルになって生活様式が変わろうと、旅行したいという欲求は消えることはないでしょう。だから今はとにかく乗り越えよう、生き延びようと自分に言い聞かせながら日々の仕事に取り組んでいます。