ポストコロナ、宿泊業界はどう変わるのか? 4つの大転換とは―宿屋大学 近藤寛和氏寄稿
宿屋大学代表の近藤寛和です。ホテル業界の専門出版社であるオータパブリケイションズで記者を18年勤めたあとに起業し、ホテル・旅館のマネジャーや経営者の育成を目的としたビジネススクールを運営しています。かれこれ、12年になります。ここでは宿泊業界に関わるコラムを書いていこうと思います。
今回は、コロナ禍を経て、日本の宿泊業界はどう変化しているのか、私なりに感じていることをお伝えします。
コロナ前の昭和時代からコロナ後の令和時代に
コロナによって世の中はどう変わるのか。「日本の社会」「働き方」「宿泊産業」の3つで整理してみました。「コロナ前の昭和を引きずった時代」と「コロナ後の令和的新しい時代」への変化。赤字で書いたものはより注目すべきであると私が感じている変化です。
主要な変化を挙げてみるとこうなります。
①標準化から多様化
②ホテルの競争激化
③急速なデジタル化(デジタルを使わないは、死を意味する時代)
④ホテル業界におけるニュータイプの登場
今回は、この4つの解説を中心にお伝えしようと思います。
※誤解を招かないためにお伝えしますと、私は「昭和はダメだ」と主張しているわけではありません。私も昭和42年生まれ、生粋の昭和人間です。昭和にも、普遍的に素晴らしいものはたくさんあると思っています。ただし、昭和をそのまま引きずっていると、変化・進化し続けている時代から取り残されて、ビジネスが成り立たなくなるのではないかと危機感を持っているということです。
①標準化から多様化
昭和時代は、「みんなと一緒」が求められました。国民の大半が大都市での生活や一流大企業への就職に憧れました。テレビが全盛で、みなが同じ番組を見て、翌日その話題で盛り上がりました。製造業が稼ぎ頭で、工場で「言われたことをその通りにこなす」仕事のやり方が求められました。国民がみな同じものを欲したので、同じものの量産というビジネスが最も効率的に儲ける方法でした。みなが平日に働き、週末やお盆や正月に同時に休むので、リゾートホテルや旅館の利用は週末や連休に集中しました。
令和時代は、価値観や生き方が多様化します。「みんなと同じ」は価値がなく、個性があるほど価値が生まれる時代です。社会やコミュニティに無理して同調していた人たちも、「自分らしさ」を求め、ダイバーシティが叫ばれるようになりました。
物質的な豊かさが満たされている時代は、同質なものがいくつもあれば、価格競争になり、モノの値段は安くなり、儲かりづらくなります。労働者も一緒で、人と同じことしかできない人の給料はどんどん下がっていきます。<同じ>よりも<違い>が価値になり、個性あるモノやヒトが選ばれる。ホテルも選ばれるために、やはり<違い>や<個性的な魅力>をつくっていく必要がありそうです。
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