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「ソリューションビジネスのさらなる発展を」JTB山北社長が描く10年後の姿とは-新春インタビュー

  • 2022年1月4日

デジタルとリアルのシームレスな体験を提供
順調な構造改革、2021年度は黒字化を見込む

 JTBは、構造改革を順調に進め、2021年度上半期では黒字化を達成するも、新型コロナウイルスの影響は引き続き大きかった。そのなかで、新たに「ツーリズム」「エリアソリューション」「ビジネスソリューション」の3つのビジネスユニットに再編し、将来に向けた成長戦略を進めている。そのキーワードは「つなぐ・つなげる」。それぞれの領域で旅行者、企業、地域とのつながりからイノベーションを創出し、社会課題の解決に貢献していく。JTBが見据える未来とは。2021年の振り返りとともに、同社代表取締役社長の山北栄二郎氏に語ってもらった。

JTB代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏
―まず、2021年の振り返りからお願いします。

山北栄二郎氏(以下敬称略) 昨年から続くコロナ禍によって、JTBだけでなく観光産業全体が大きな影響を受けています。2020年度は一時的にせよ「Go To トラベル」による国内需要の回復などメリハリのあった年でしたが、2021年度はこれまで低迷した状況が続き、2020年度よりもさらに厳しい年になったとの認識です。

 2020年度から、店舗数の縮減や早期退職など断腸の思いで構造改革を進めてきた結果、2021年度上期はなんとか黒字化を達成しました。そのなかで、様々なビジネスの芽が生まれています。社会のデジタル化が加速しているなか、店舗での接客オンライン化など、新たなお客様との関係づくりを進めることで、付加価値を生み出すことができたと思っています。

 例えば、JTBリモートコンシェルジュという、ご自宅で家族と一緒にいながら、オンライン上で旅行相談ができる仕組みを作りました。店舗での高いホスピタリティ接客をオンラインでも体験していただくとともに、予約決定のスピードが速くなる効果も生まれました。法人では、オンラインやハイブリッド型のイベントの取り扱いが拡大し、コロナ禍でも企業の課題に正対した提案をしてきました。コロナ禍ではありましたが、社員がこの状況でさえ機会ととらえるポジティブな考え方を持ってくれたおかげで、2021年度は最終的に黒字化が達成できると見込んでいます。

 一方で、観光産業のインフラは大きくダメージを受けたままです。人材不足が深刻で、多方面でいろいろな課題が出てきています。また、総じて負債も増えており、再び立ち上がるための力が必要になっているのが現状だと思います。

―これまで進めてこられた構造改革ならびに来年度の資本政策をお聞かせください。

山北 一連の構造改革については、スリムな経営体制を目指し、国内グループ会社を2021年度末までに計11社を削減。また、販売機能改革では、国内の店舗数を115店舗削減します。要員については、海外を含めてすでに約8000人を削減しました。構造改革については一段落していますので、これ以上の削減は考えていません。

 旅行業の効率性を高めていく課題は続いていますので、デジタル化の対応と経営効率の向上は継続していきます。純資産は2021年度第2四半期で800億円を超えて確保しているので、増資などこれ以上の資本政策の検討はしていません。

―今後のネットとリアルの販売の割合はどのように変化していくとお考えですか。
オンライン相談専門店も開設。リモートコンシェルジュをオンラインで予約して相談をすることができる(写真提供:JTB)

山北 比率はこちらが勝手に決められるものではありません。あくまでお客様がどのようなチャネルを選ばれるかによって変わってくると思います。大きな流れとして、デジタル接点が増えていくのは間違いないでしょう。

 店舗型の売上とネット販売の割合については、従来の8対2ほどから、コロナ禍で6対4くらいになっています。今後、コロナが落ち着いてくると、来店するお客様が戻ってくるのではないかと見ています。

 店舗に来ていただけるお客様は人と人との接点のなかで、より詳細な相談を求められます。このニーズは今後もなくならないだろうと思っています。大きなトレンドとしてはデジタルへのシフトは進むものの、意図的にネットの割合を高めていくという考え方は持っていません。

 今後はデジタル体験とリアル体験をよりシームレスに繋いでいくことが大切になってくるでしょう。予約データを一本化し、それぞれのお客様により深く刺さる提案ができるようになります。「デジタルの基盤の上にヒューマンの力を乗せていく」ことをコンセプトに、店舗、オンライン、コールセンターをシームレスに組み合わせることで、顧客体験を進化させていきたいと考えています。

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