「需要はすでに十分にある」22年はカナリア諸島、ユニバーサル旅行を強化-スペイン政府観光局 局長ハイメ・アレハンドレ氏

  • 2022年1月11日

旅行会社向け研修旅行も再開
観光分野のサステナブル対策として74億ユーロを投資

―今後の日本でのプロモーション計画を教えてください。

アレハンドレ 2022年も旅行業界やメディア向けの研修旅行を実施します。デスティネーションとして再び信頼を得るためには現状を見てもらうのが一番だと思うからです。スペインへ行くことが、想像よりいかに簡単で安全かを体験してもらうのが重要だと思うからです。

 2021年7月に新たに世界遺産登録されたマドリード中心部のレティーロ公園からプラド通り周辺の「光の景観」と名付けられたエリアのプロモーションにも力を入れます。

カナリア諸島はヨーロッパのハワイと呼ばれる人気のリゾート地だ(写真提供:スペイン政府観光局)

 デスティネーションとしては、ヨーロッパの代表的なリゾート地のひとつであるカナリア諸島の紹介を強化します。というのも日本の市場調査をおこなったところ、「まだ日本であまり知られていない未知のスペインが感じられる場所に行きたい」という結果が出たからです。マドリードからカナリア諸島の観光拠点テネリフェまでの距離は、東京/那覇とほぼ同じ。独特の食文化と、火山性の土地で育まれたワインが大きな魅力のリゾートです。

 もう一つ、プロモーションを強化しようと考えているのはユニバーサル・ツーリズムです。すべての人々が同じ権利を享受できる世界を創ることは、国連が提唱して国際的に取り組みが進むテーマです。ですから我々のような政府機関が、たとえば観光や教育の面ですべての人々の権利を保障するために取り組むのは使命であり避けて通ることはできません。加えてビジネスとしての可能性も見逃せません。

 国連の推計によれば何らかの障害を抱えた人々は各国人口の1割を占めるとされています。つまりスペインであれば約400万人、日本なら1000万人の人々が、耳や目が不自由だったり、体に障害があり車椅子の利用が必要だったり、ダウン症を抱えていたりするわけです。正しい使命を果たすというだけでなく、市場としても注目すべきだと考えています。その点で言うと、スペインには可能性があります。世界トップクラスの環境が整備されており、王宮、博物館・美術館などを含め国有施設は全て車椅子で見学できますし、大部分のホテルや宿泊施設も車椅子の受け入れが可能です。これは私が保健社会サービス平等省の局長を務めていた当時に力を入れた分野ですから間違いありません。

 具体的なプロモーションとしては今年、ユニバーサル・ツーリズムの研修旅行を計画しており、「カスティージャ・イ・レオン」「カスティージャ・ラ・マンチャ」「アンダルシア」の3州を訪問する内容を検討しています。

―トラベルビジョンの読者にメッセージをお願いします。
アレハンドレ氏

アレハンドレ コロナ禍によって、多くの国々で観光インフラが傷つきました。しかしスペインでは政府が観光産業に対して巨額の支援をおこない、その傷を最小限にとどめています。旅行関連企業が休業を選択せざるを得なくなっても、従業員を確保し続けられるような支援をしました。観光産業にとって重要な人と人とのネットワークは維持されています。ですから日本の皆さんのメールや電話やファックスの向こう側には、以前からの担当者が待っています。日本の海外旅行が再開した暁には、どうぞ迷わずこれまでの担当者にコンタクトしてください。

 スペイン政府観光局は「光」をテーマに2022年の卓上カレンダーを作り旅行業界に配布しています。「光」は明るく輝くだけでなく、希望ももたらす存在です。そして、かつて「陽の沈まぬ国」として世界に君臨したスペインと、「日出ずる国」として知られる日本が、光と言う言葉で繋がることを嬉しく思います。

 コロナ禍が落ち着き海外旅行が再開した時に、皆さんが一番最初に訪れる国がスペインであってほしいと思います。

―ありがとうございました。