「需要はすでに十分にある」22年はカナリア諸島、ユニバーサル旅行を強化-スペイン政府観光局 局長ハイメ・アレハンドレ氏

  • 2022年1月11日

旅行会社向け研修旅行も再開
観光分野のサステナブル対策として74億ユーロを投資

 スペイン政府観光局のハイメ・アレハンドレ局長はコロナ禍の2020年9月に日本支局へ着任。職務に就いてから1年以上が経過し、ようやくコロナ禍は落ち着きつつあるが、そのような中で同局は日本からの研修旅行をいち早く再開し日本人旅行者誘致に力を入れる。スペインの現状やコロナ後に向けたプロモーションなどについてアレハンドレ局長に聞いた。

駐日スペイン大使館観光参事官 スペイン政府観光局局長のハイメ・アレハンドレ氏
―アレハンドレ局長の自己紹介からお願いします。

アレハンドレ局長(以下敬称略) 国家公務員として38年間仕事をしていますが、その間にスペイン保健社会政策平等省障がい者政策調整局長、スペイン環境省環境品質評価局長などを務めました。その一方で執筆活動にも取り組んでおり、詩集や小説、ノンフィクション、演劇脚本などの著作も30冊以上あります。87年に出版した小説では日本の下関について触れたこともあります。また最近は、70カ国以上を旅行した経験を基に観光関連のノンフィクション作品を書き上げました。

―スペインを訪れる日本人旅行者数は順調に増え19年は68万人を超えていました。コロナ禍前の好調さの理由について、どのように分析していますか。
(上)ソフィア王妃芸術センターのゲルニカ展示室
(下)ビルバオのバルの風景
(画像提供:スペイン政府観光局)

アレハンドレ スペインの観光的な魅力については世界経済フォーラムが2年ごとに発表している国際観光競争力調査でも高く評価されており、とくに2015年以降は世界1位を維持しています。魅力的な食事や、フラメンコに代表されるエキゾチックな文化、ピカソやガウディの作品をはじめとする芸術的な魅力が世界中の旅行者を惹きつけていますが、一番の要素は外国人を温かく受け入れるスペイン人気質だと思います。

 その上で日本人旅行者にとってのスペインの魅力として加えるなら、日本との共通性です。たとえばカナリア諸島のテイデ山は富士山とほぼ同じ高さですし、温泉や海水浴、サウナなど水に関するアクティビティ好きは日本人とスペイン人に共通する嗜好性です。タパス料理が日本人に人気なのも、懐石料理と同様に少しずつたくさんの種類を食べる類似性があるからでしょう。

 もう少し理由を加えるなら、スペインはナイトライフを安全に楽しめる国であることや、交通網の充実や上質なサービスを提供するホテルの存在など、観光の品質の高さも挙げたいところですし、世界最高峰のレベルを誇るサッカーリーグの存在も挙げておきます。

―外国人旅行者の受入に関するスペインの現状を説明してください。

アレハンドレ 外国人訪問客を受け入れるに当たって重要なことはウィルスに対する社会的な免疫力を高め事態をコントロールすること。つぎにコントロールするためのシステムを構築することです。その意味でスペインはソーシャルディスタンスの確保やマスク着用の普及が定着し、ワクチン接種に関しても必要な人の90%が接種済みです。また来訪者に対するワクチン接種証明書やPCR検査陰性証明書の提出、健康状態申告フォームへの入力といった制度も整備済みです。

 このように事態をコントロールできるシステムのベースができているため、たとえば新たな変異株が登場しても、それに応じて対応することが可能です。

 こうしたベースがあってのことですが、2021年8月の外国人訪問客数は、史上最多だった2019年との比較で50%まで回復しました。それでありながら9月~11月の感染者数は増えていません。これはコントロールするシステムが良く機能している証です。

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