日本航空、国内線「明るい兆し」で現金流出解消、国際線は3~4月予想
日本航空(JL)代表取締役社長の赤坂祐二氏は12月10日、定例会見で国内線の回復により現金流出が解消したこと、2023年度入社から客室乗務員などの採用を再開する方針などを説明した。
業績については、10月はコロナ前に比べて国内線が5割、国際線が1割弱に留まったものの、11月は速報値で国内が6割程度、国際は1割程度となり「かろうじてEBITDA(営業利益+減価償却費)が黒字」化。このまま「早期の単月黒字(を実現し)、年度末まで徹底的に収支改善に務めていきたい」考えだ。
国内線については、オミクロン株の影響は皆無で需要も「かなり戻ってきて明るい兆しが見えてきた」ところで、ジェットスター・ジャパン(GK)もロードファクターが8割超え。JLでは、主要路線が特に好調である一方で観光需要や非主要路線は遅れているところだが、観光についてはGoToトラベルを待っての買い控えの可能性もあると見ており、年度末に向けては「十分期待できる」という。
一方、国際線についてはすでにオミクロン株の影響を「少し」受けており、同変異株の特性が解明されるまでの1、2ヶ月間は「少し厳しい」可能性があると見ているところ。中期経営計画で想定した回復の見通しを見直す必要はあるかもしれないとしつつも、3月か4月頃には「国際線の回復がいよいよ始まる」と希望的観測も含めて考えているとした。
ただし、オミクロン株の出現に伴う入国制限については「正直に言って非常に残念」と語り、「国境開放に向けて流れができていたなかで、オミクロンで頭を叩かれたような感じで目の前が真っ暗になった」とコメント。現時点ではオミクロン株に懸念されていたほどのリスクがない可能性があることから、「こうした制限をしている国は非常に少なくなってきている」「正体をしっかり見極めたうえで、早く入国制限の緩和、特に隔離期間の短縮をお願いしたい」と要望した。
A350への切り替え順調、ZIPAIRなどLCCにも期待
会見では5月に発表した中期経営計画の進捗も説明。FSC事業では、20年ぶりのフラッグシップ刷新であるB777からA350の切り替えを進めており、国内線ではA350-900が今年3月末では8機だったところから現在は13機に増え、年度末には15機に増加。国際線では2023年度からA350-1000を導入していく。機材の仕様については、衛生対策や安心安全の観点で新しい設備などが登場する可能性があると見ており、「積極的に取り入れていきたい」考えだ。
また、力を入れているLCC事業では「成田をハブとするLCCネットワーク」の構築が順調に進んでおり、特にZIPAIR(ZG)がコロナ禍でもたった1年半で米西海岸への就航を実現できたことは「いろいろな努力の成果」であり、また当局や成田国際空港(NAA)の支援の結果でもあるとして、「しっかりロサンゼルス線を成功させて安全運航を確立して北米地点を増やしていきたい」と語った。
このほか、貨物は引き続き好調で、収益は再上場以降の最高値を更新する見込み。今後もZGやGKの路線も活用して貨物輸送の強化を目指す。また、マイレージ事業でのサービス拡充や、JALUXの連結子会社化によるライフ・コマース事業の飛躍的成長などにも継続して取り組む。マイレージについては、「今の延長ではだめ。毛色の変わった新商品を作っていかなければ」との考えで、今年発表して「かなり好評」というJAL住宅ローンのような取り組みに力を入れていく。
ドローンを活用する次世代エアモビリティ事業では、2023年度に物流、2025年度に「空飛ぶクルマ」のサービス開始をめざす。
なお、来春頃を予定している国内線運賃の見直しについては、「複雑でわかりにくくなっているところを解消して世界標準にする」「非常にシンプルになる」ことを意図しており、値上げが目的ではないと説明。レベニューマネジメント強化のなかで、繁忙期に高い運賃を投じることはあり得るものの閑散期には安い運賃で需要喚起をするとし、「早期割引がなくなるということもない」と語った。