問われるのは顧客ニーズを汲んだ商品造成力-北海道グラウンドサービス代表取締役 永井雅史氏

富裕層はたとえ戻っても旅行会社を必要としない
真に良いと思う素材を組み込んだ旅行商品を

-コロナ前の国内旅行、インバウンド旅行の取扱比率と、今後の見込みについてお聞かせください。

永井 当初は日本人のお客様からスタートしたのですが、スキー関連事業についてはニセコにいるオーストラリア人の友人からのリクエストもあり、外国人のお客様の受け入れも始めました。6、7年ほど前から外国人客の比率が高くなってきているなと感じるようになり、コロナ前には逆転していました。特にスキーバスは利用者の85%が外国人の方でした。

 今シーズンについては日本人のみでかつての4割から5割が戻り、来シーズンについては日本人・インバウンド含めて全体で7割から8割くらい戻るのではないかとイメージしています。その内、インバウンドが占める割合は7割から8割でしょうか。特にニセコはコンドミニアムのデザインなどがラグジュアリーにアップグレードされているので、日本人で経済的に余裕がある人には魅力的に映るでしょう。一方、リーズナブルな旅を求める人にとっては敷居が高くなると思われます。また同じ理由から、アジア人も一部の富裕層以外は戻りづらいのではないかと考えています。富裕層は自由に動けますし、北海道に投資もしているので戻ってくるでしょうけれど、それ以外は厳しいでしょう。

 そして富裕層は旅行会社を必要としません。彼らには旅行部分のみならず、現地でのすべての世話をしてくれるパートナーや​秘書たちがいるので、一般的な旅行会社に航空券やホテルだけの手配、ましてやパッケージをお願いするということはまずないでしょう。よほどラグジュアリーだったりユニークな体験を独占的に提供できるのであれば別ですが、それはどの会社にもできることではありません。​日本の旅行会社がインバウンド富裕層に対してサービス提供できるチャンスはかなり限定的ということになります。

-今後の方針についてお聞かせください。

永井 当社は旅行業登録もしており、以前は自社で造成した商品を大手旅行会社さんやポータルサイト経由で販売してもらっていましたが、現在はほぼ自社サイトでの直販に絞っています。商習慣が時代の流れでどんどん変わり、自由競争の時代なのにも関わらず、売値は上流の意向により固定されてしまい川下は知らないぞという風潮には到底ついていけません。今は自分たちでできる範囲でやろうと考えています。

 かつては、輸入元商社の肝煎りでスキー板のレンタル事業を行うなか、大阪のスキー専門旅行会社からタイアップして​スキーバスをやってみないかと声をかけてもらったり、大手ではスキー客の集客が難しくなってきたことを受けて、当社が集約を請け負ったこともありました。実際はツアーだけでは大損で、スキーレンタルの売上で埋めていましたが、それでも大手と協力してツアーを販売すると5000人規模での集客ができて面白い面もありました。ですが、今後旅行商品を作るのであれば、自分で足を運んで本当に良いと思うものを組み込み、しっかり利益を取らなければいけないと考えています。旅行会社の人でも、自身が良く知らない商品のチラシを作ると、オリジナリティのないものになってしまいますよね。これでは売る側も買う側もモチベーションが上がりません。

 北海道に関して言えば、例えば家族連れなどの小グループが利用するような商品造成を目指せば、夏場も含めて生き残れるのではないかと思います。今の旅行商品は顧客のニーズとマッチしていないと強く感じます。当社も営業所を置いていますが、ニセコはやはりロケーションが良い。ルスツ、キロロ、札幌、新千歳空港などと組み合わせて円環状に繋げることができます。将来的には洞爺湖や小樽など、全てを繋げた商品を造成する力があるかどうかが重要だと思います。当社としてもそこは考えどころです。

-観光産業へメッセージをお願いいたします。

永井 若い人に向けて、「頑張って考えて、やりたいことをやってみろ」と激励したいです。「そのアイデア面白いね!でもちょっと危ないんじゃない、助けてやろうか?」と思わず声をかけてしまうような若者に出てきてほしいと願っています。若い人はどんどん挑戦しても失敗してもいい。後ろでそれを支えるのが年配者の役割ですので。

-ありがとうございました。