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インバウンドの消えた北海道、コロナ後に進むべき道は-北海道運輸局長 加藤進氏

観光関連事業者は補助金の活用を 
コロナ後はアドベンチャートラベルを大きな柱に

-観光需要減への対策についてお聞かせください。

加藤 観光産業については3つの柱で取り組んでいます。1つ目は感染症拡大の防止対策に対してしっかりと手当していくことです。各業界で策定したガイドラインの遵守の徹底のほか、補助金等も活用して備品や設備を整えていきます。特に北海道では、今夏から宿泊事業者へ向けた感染防止対策の経費の補助を北海道庁が国からの予算に上乗せして行っています。既に支払いを行った費用についても昨年5月まで遡って申請可能で、消耗品のほか、コロナとの共存に向けた新しい取り組みも支援対象です。是非活用して対策を徹底してもらいたいと思っています。(編集部注:北海道の宿泊事業者感染防止対策等支援事業の対象経費具体例はこちら)

 2つ目は事業の継続、雇用の確保です。資金繰り支援や雇用調整助成金の活用で産業全体を下支えしていきます。加えて観光庁の「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」、地域の観光支援の磨き上げを通じた域内連携促進に向けた実証事業のほか、経済産業省の事業再構築促進事業、在籍型出向を支援する厚生労働省の産業雇用安定助成金など、各省庁の様々なメニューも活用して応援していきます。また、地方創生臨時交付金を観光や交通の応援に活用してもらえるよう自治体に対し働きかけています。

 3つ目は日常生活との両立です。技術実証の検証と並行して、感染状況を見ながら需要の喚起を進めていく必要があります。まずは市町村独自の割引を推進し、その範囲を都道府県へ広げるなどにより徐々に範囲を拡大し、Go Toトラベルに繋げていく。このような取り組みを通じて、切れ目なく需要の回復を応援していきたいと考えています。

-インバウンド需要復活についてはどのようにお考えですか。

加藤 日本でも感染状況が落ち着いてきて、11月8日から入国制限の緩和もなされました。インバウンドについては年内を目途に行動管理の実効性等について検証を行い、今後の団体観光の入国再開に向けて検討を進める予定と聞いています。再開に向けた取り組みが進むことを期待しています。

 一方で民間では、エアラインが海外を含めて就航便数を増やしてきています。特に北海道ではフィンエアーがヘルシンキ-新千歳便の来春再開を宣言してくれたことが大きく、期待しています。

 我々もデスティネーションとして忘れられないよう、北海道の魅力を定期的に発信する必要があると考え、PRを続けています。現在は「HOKKAIDO LOVE!」というキャンペーンと連携して、パウダースノーを活かしたスキー、食、アドベンチャートラベルという3つの魅力を柱としてアピールしています。

 結果的にはバーチャルでの開催となりましたが、今年「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(ATWS)北海道/日本」が開催された成果も大きかったです。主催者からは、4日間の会期中に配信したPR映像も反応が非常に良かったという言葉をいただきました。北海道の雪は浸透してきていると思いますが、グリーンシーズンだったこともあり、新たなアドベンチャートラベルのデスティネーションとして欧米の方々に響いたのではないかと思います。また、「共生」という今回のATWSのテーマとアイヌの文化には親和性があり、そういった面でも手応えを感じることができたサミットでした。

 このほか、JNTOの企画で、バーチャルツアーとEコマースを組み合わせた海外向けの観光プロモーションがあります。現地で人気のあるインフルエンサーと組んだ取り組みで、北海道でも12月に実施する予定です。魅力の発信だけではなく消費を通じた地域への支援にも繋げながらインバウンドへの取り組みを継続し、いつでも受け入れを再開できるようにしていきたいと考えています。

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