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インバウンドの消えた北海道、コロナ後に進むべき道は-北海道運輸局長 加藤進氏

観光関連事業者は補助金の活用を 
コロナ後はアドベンチャートラベルを大きな柱に

 地域の公共交通や事業振興など、幅広い役割を担う国土交通省の地方運輸局。現在北海道運輸局で局長を務める加藤進氏は、国交省のなかでも観光に関わりの深い仕事を歴任してきた人物だ。いま北海道は感染症対策と日常生活をどう両立していくかの局面にあるという加藤氏に、Go Toトラベルをはじめとする観光産業への支援やインバウンド誘客への考えを聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

北海道運輸局長の加藤進氏

-はじめにご自身のご紹介をお願いいたします。

加藤進氏(以下敬称略) 神戸生まれで大学進学を機に東京へ移り、1990年に運輸省(現国土交通省)に入省しました。観光に関わりの深い仕事としては、観光庁の発足の際に予算や定員などを扱う総務課企画官として携わったほか、九州運輸局では企画観光部の部長を務めました。鉄道局にいたときには東京メトロ民営化があり、せっかくなら駅名表示にナンバリングをしたら外国の人も分かりやすいのではと提案し、都営地下鉄も含めて働きかけました。また、LCCの就航が始まる時期に成田空港を担当し、受け入れ体制を整えるため、ターミナルの整備や離着陸時間の制限の柔軟化に努めました。その後内閣官房、トラック関係、観光庁審議官を経て、昨夏に北海道運輸局長に着任しました。

-北海道の観光産業や地元経済へのコロナの影響はいかがでしょうか。

加藤 北海道観光振興機構による推計では、2020年度は観光消費額が1兆円減少したと出ています。インバウンドの消滅に加えて行動制限により消費額が大幅に減っており、影響は甚大です。

 北海道では本州よりも1ヶ月早くコロナの影響が現れ始め、昨年4月、5月はどん底の状況でした。一時期は地域の割引施策やGo Toトラベルで回復し、今年も当初は昨年より良くなることを期待していましたが、今夏はまん延防止等重点措置や緊急事態宣言のため様々な地域割引やGo To トラベルなどが発動できず、やはり苦戦を強いられています。この冬もインバウンドが期待できないこともあり、昨年よりも厳しい状態になる可能性も危惧しています。

 北海道の宿泊施設数のデータ(速報)によると、営業施設数に関しては2019年度には前年より減少しているものの、2020年度は営業施設数や客室数は2018年度と比較しても若干増えています。休止していた施設を別の事業者が買収する事例もありますが、休業はしていても廃業ではなく、政府の支援策などを活用しながら事業を継続させていこうとしている事業者が多いのではないかと推測しています。また、コロナ後のインバウンド需要を見込んだ動きも出てきているのではないかと見ています。

 感染症対策と日常生活をどう両立していくかが今のフェーズです。10月以降、政府はワクチン・検査パッケージを活用した技術実証に取り組んでおり、その結果や感染状況も踏まえてGo Toトラベル再開という流れになるでしょう。一方で地域ごとに事情も異なるため、先行して市町村や都道府県が独自の割引を実施していくなど、徐々に地域を拡大しながらGo Toトラベルに繋げていくのが望ましいのではないかと考えています。

-「We Love 札幌」宿泊キャンペーンが実施されていますが、効果をどのように見ておられますか。

加藤 道民の皆さんのマインドが変わりつつあるのではないかと感じています。「We Love 札幌」単独の効果だけでなく、行動制限の緩和やワクチン接種の普及があり、さらに、これまでに札幌以外では地域独自の割引が既にスタートしていたこと、北海道庁の「新しい旅のスタイル」が、当初対象外だった札幌も含めて10月半ばから再開されたことなどもあり、「そろそろ出かけてみようか」という流れが生まれ始めたのではないでしょうか。

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