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見直しが求められる日本型の商習慣、観光素材の仕入れの変化とは-JATAインターナショナル・ツーリズム・フォーラム2021

日本市場が取り残されないために変化が必要
現地サプライヤーとの密なコミュニケーションを

デポジットや支払い早期化に理解を

ミキ・ツーリストの氏家淳取締役副社長

 地上手配に関しては、世界中で旅行需要が停止したためサプライヤーの多くが多大なダメージを受けていることを前提に、ミキ・ツーリストの氏家副社長は「彼らが経営を維持していくため事前のデポジット、支払いタームの早期化、キャンセルチャージの厳格化が進まざるを得ない状況だ」と分析。

 またコロナ禍にかかわらず、観光産業においてもCO2排出削減やSDGsの重要性、あるいはオーバーツーリズムの回避がクローズアップされる中で「大都市中心部への観光バスの乗り入れ規制や、観光施設への入場規制に伴う予約制の導入が進みつつあり、これまでは1グループで観光できた内容を2~3グループに分けなくてはならなくなるため、観光の所要時間も従来の1.5~2倍を見ておかなければならない」と付け加える。

 さらに各種規制等は短期間で更新され「2週間に1回更新される場合もあり、3カ月先も同じ条件ということがない中で、どう現地手配していくかの仕組みを旅行会社と共に作っていきたい」(氏家副社長)としている。

 マカオ政府観光局の榊原局長もコロナ禍後の仕入れ環境の変化を予想する。「コロナ禍を機にサプライヤーがビジネスの見直しを図る中で、『日本市場はおかしくないか』との見方が出てきている。デポジットなしでアロットを抑えて30日前になると大量リリースを求める日本市場のポジショニングは見直される方向だ。これまではアジアの中で日本が特別扱いされていたが、コロナ禍で立ち止まって改めて考えてみたら日本より良い市場が他にあると受け入れ側が気付きつつある」からだ。

 したがって今後は「日本の旅行業界も受け入れ側のこうした意識変化を受け止め、ビジネスの歪みを正して地元業界に貢献する日本市場というポジショニングを築かない限り仕入状況の見通しは暗い」としている。

 ミキ・ツーリストの氏家副社長は、同社がビジネスの主舞台とするヨーロッパにおける根本的なビジネス環境の変化に言及。「環境問題や持続可能性を重視する動きは、国や企業の主導ではなく、市民や市民団体からのボトムアップで大きく変化しつつあり、航空移動から鉄道移動へのシフトや、都市中心部へのバスの乗り入れ規制などの動きが始まっている。少人数で大型バスを使い都市間を移動して観光する日本のスタイルがヨーロッパで受け入れられなくなる可能性もある」との懸念を示した。

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