2022年1月に事業分野別の組織再編を行うT-LIFEホールディングス、その狙いを代表取締役社長 石川邦大氏に聞いてみた

  • 2021年10月27日

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 事業会社5社を傘下に持つ「T-LIFEホールディングス」は、2022年1月に事業分野別に再編すると発表した。各社法人部門を東日観光に吸収合併したうえで、新たに「T-LIFEパートナーズ」を立ち上げ、各社個人旅行部門を現在のT-LIFEホールディングスに吸収合併する。2018年4月に事業持株会社を設立して3年。新型コロナの影響が長引くなか、再編を決めた背景とその狙いはどこにあるのか。代表取締役社長の石川邦大氏に聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

石川氏

-旅行業界で長いキャリアを持ち、豊富な経験と実績を重ねていらっしゃいます。改めて、自己紹介をお願いします。

石川邦大氏(以下敬称略) 2008年にトップツアーの代表取締役社長を務め、2010年にはトップツアー、近畿日本ツーリスト、日本旅行の3社で設立したビジネストラベルネットワークの経営にも携わりました。その後、2018年にT-LIFEホールディングスの代表取締役社長に就任し、現在に至っています。

 いくつかの会社の経営に関わってきましたが、会社はそれぞれ特徴があり、その違いを理解しながら、経営をよりよい方向に進めていかなければならないと思っています。

-新型コロナウィルスの影響はいかがでしょうか。

石川 2020年度(1-12月)売上高は、2019年比で76%減となり、大きな打撃を受けています。分野別で見ると、国内が同70%減、海外が同88%減、インバウンドが同90%減。今年度は依然として海外とインバウンドは厳しい状況ですが、国内が回復傾向にあるため、最終的な売上高は昨年度を上回り、2019年の30%近くには戻せるのではないかと思っています。

-コロナ禍でのコスト削減の取り組みをお聞かせください。

石川 コロナ禍の影響がいつまで続くか分からなかったため、早めに社員の副業を可能としました。リストラはせず、雇用を継続していくために、グループ内外への出向等を実施しました。そのほかには、他社と同様に雇用調整助成金など公的支援を活用しています。

-アフターコロナの旅行需要に変化はあるでしょうか。

石川 コロナ後に元に戻る可能性が高いものと低いものがあると思います。元に戻る可能性が高いものはレジャー。どれくらい時間がかかるかは分かりませんが、元に戻ると思います。コロナ禍でオンラインツアーなどが販売されていますが、旅行は現地に行かなければ体験できないことがあるので、実際に行けるようになれば回復していくでしょう。また新型コロナの長期化によって生まれたオンラインツアーなどについては、高齢者など事情があって旅行に行けない人に対しての需要は今後より高まるかもしれません。

 一方、戻らない可能性が高いのは出張です。なくなることはないと思いますが、代替手段としてオンラインでの商談が可能になった今、出張の回数が減る可能性は高いでしょう。

 判断しづらいのは展示会や見本市、イベントなどです。オンラインでコンベンションなども行われていますが、参加者、出展者ともに以前と同じような効果を得ることは難しく、現在ハイブリッドなどが実施されています。

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