2022年1月に事業分野別の組織再編を行うT-LIFEホールディングス、その狙いを代表取締役社長 石川邦大氏に聞いてみた

  • 2021年10月27日

事業会社の壁を超えて、機動的なビジネス展開を
個人はテーマ性の高い商品でOTAに対抗

-先日、組織再編を発表されました。その背景と狙いを教えて下さい。

石川 当社は子会社である旅行会社5社(タビックスジャパン、東日観光、トラベルイン、東京旅行、湯旅)を2022年1月1日に事業分野別に再編します。法人旅行事業については東日観光、湯旅、タビックスジャパンの法人営業部門を統合し、新たにT-LIFEパートナーズ株式会社を設立します。また個人旅行についてはトラベルイン、東京旅行とタビックスジャパンの個人部門を現在のT-LIFEホールディングスに統合します。

 再編の目的についてお話をする前に、3年前に設立したホールディングスの効果と課題についてお話します。

 3年前にホールディングスを設立した主たる目的は、一般管理や仕入れなど各事業会社に重複している機能を集約することで効率化を図ることでした。併せてT-LIFEグループ全体の大きな意味での社内インフラ(働く環境)を整備することが重要で、その中にはシステムのみならず人事制度や社員教育なども含まれました。また、それらについては一定の成果があったと思っています。仕入れ環境については、かなり改善しました。個人旅行の予約受付や運行管理に関する業務は基幹システムが稼働したことで全国のタビックスの店舗とトラベルインで行っていたものを一か所に集約することができ効率化を図ることができました。一方営業については各事業会社が持っている得意分野を活用し、グループ全体として強化を図りたいと考えていましたが、上手くいった分野と上手くいかなかった分野がありました。

 上手くいったものは、各社に共通する得意分野の強化です。たとえば、バリアフリーの旅行はタビックスと東日観光の得意分野でしたが、双方が協力することでより広域に営業・販売することができました。その結果、グループ全体のバリアフリー旅行の取り扱い人数は2018年の2万人から2019年には3万人に拡大できました。

 上手くいかなかったものは、各社が独自で持つ得意分野をグループ全体として強化することでした。それをするためには会社の壁を越えて出向や転籍などの異動をする必要があったからです。今回の再編ではその壁をなくし、各社が長年培ってきた得意分野に関するスキルやノウハウをT-LIFEグループ全体として共有、強化できるようにしたいと考えています。

-それぞれの従業員数を教えて下さい。

石川 T-LIFEホールディングスが大阪と東京で160名、T-LIFEパートナーズは全国48事業所で340名。営業はお客様の近くの方がベターという考えを持っているので、事業所は多く、今回の再編にあたっても一部統合はあるものの閉鎖は考えていません。

-再編にあたって、人事面の効果に期待するところを教えて下さい。

石川 今までは同グループ内であっても各社が持つ得意分野に相互に社員が携わるためには出向や転籍が必要でした。今回の再編ではその敷居がほぼなくなるので柔軟で効果的な人事異動が可能となります。また社員自身にとっても社会人としての長い人生の中で様々な業務を経験することでスキルやノウハウをUPする可能性が広がります。

-再編は採用面でも効果が出てくるでしょうか。

石川 採用では自分たちの会社が何をやっているか、またどんな方向に進もうとしているのかをわかりやすく、また旅行業界を志望している学生にきちんと届くよう発信することが大切だと思います。実際そうすることで良い社員を採用できるようになりました。

 また、ホールディングス設立前は、社員教育も各社任せでしたが、人事制度を統一し、集合研修のみならずOJTパートナー制度など、社員を育てる仕組みづくりも進めてきました。

 ただ、コロナ禍で入社した新入社員は部署によってはほとんど旅行会社らしい仕事ができていないことをとても残念に思います。今後、ツアーが再開したらまず添乗に行かせたいと考えています。

-再編によって取引先との関係は変わるでしょうか。

石川 特に変わらないと思います。サプライヤーの皆さまとの契約は、この3年間でホールディングスとの契約にほぼ移行しています。今日まで多くのお客様にご利用いただいた個人旅行のタビックスとトラベルインの名前は商品のブランド名として今後も活用していきます。また、法人のお客様に対しては、商号をパートナーズに変更したことと新たな会社の特徴を周知するとともに丁寧に説明をしていく予定です。

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