旅の力で青少年の成長を支援する施設にー京都市宇多野ユースホステル 佐藤隆芳氏

教育旅行向けにさまざまな体験を提供
コロナ禍で家族利用も増加

-ホテルや旅館と異なるユースホステルの役割はどこにあるのでしょうか。

佐藤 宿泊施設と併せて、青少年育成の場としても考えています。例えば、京都市は中学2年生になると職業体験を実施しており、我々も受け入れをしていますが、昼間の掃除などで終わってしまいます。そこで独自に中高生を対象に、夏休み期間、「ジュニアインターシップ」という形で1週間住み込みで働いてもらう取り組みをしています。フロントでは外国人対応で生の英語に触れたり、地域のお店にインタビューに行きそれを夜のイベントで発表するなど、ユースホステルならではの多様な経験の機会を提供しています。

 中高生だけでなく、国内外の大学生のインターンシップ、特別支援学校や課題を持った若者の社会体験の場としての受け入れも行っています。また、日本の学生を海外のユースホステルにインターンシップとして派遣する取り組みも行っています。

-コロナ前の稼働率を教えて下さい。

佐藤 ユースホステルは客室稼働率ではなくベッド稼働率で算出します。コロナ前の稼働率は約6割でした。コロナ前の過去5年間で平均年3万7000名ほどが利用していましたが、現在はその1.5割程度に落ち込んでいます。

-今後の需要回復はどのように見ていますか。

佐藤 今後3年の間にコロナ前の数値に回復するための事業計画を立てています。インバウンドについては、まだ1年ほどは戻らないだろうと予測しています。

 我々としては、需要の回復と併せて運営体制の回復という2つの視点が必要と考えています。コロナ禍で退職に伴う人員補充を見送ってきましたので、業務の効率化を進め、少ない人員で対応できる方法を模索しながらも、需要が回復するなかで次の人材の育成も進めていきたいと思っています。

-最後に読者へメッセージをお願いいたします。

佐藤 需要の取り合いではなく、連携の間口を広げて、一緒に新しいことを生み出していきたいと思っています。青少年育成という観点では、修学旅行という従来の形態もありますが、個人でも中学生や高校生がより学び多い旅に出たいと思える仕組みやきっかけが作っていけたらと考えています。

 数年前に、親の薦めで中学生の男の子が1人旅でここを訪れたことがあります。2、3日滞在して帰るとき、彼の顔つきや目の輝きが違って見えました。彼にとって自分1人で旅ができたということが達成感や自信につながっているように見えました。それが旅の力であり、ユースホステルの役割であり、そういう経験ができる社会的な空気と環境を作れるようなユースホステルになりたいと思っています。

-ありがとうございました。